綾瀬司…… それは飛鳥の知ってる名前だった 綾瀬は飛鳥の旧姓 そして司は兄の名前 ｢お兄…ちゃん……？｣ ｢そうだよ｣ まさか生き別れになった兄に再会するなんて 思ってもみなかったから 飛鳥は少し戸惑ってしまった もう会うことはないと思っていた兄 嬉しい、けど どうして今更会いに来たのだろう ｢どうして……｣ ｢ずっと探してた お前に会いたくて 父さんに母さんの居場所聞いたけど 父さんも知らないし 見つけるのに苦労したぜ｣ ずっと探しててくれたのか それなのに自分は兄の存在を記憶から消そうとしていた その事に罪悪感が沸き上がる バツの悪い顔をする飛鳥に司は 取り合えず中に入っていいかと聞く ｢ああ、そうだよね ごめんなさい 狭いけどどうぞ｣ 二人は中へと入る 外観と同じで期待を裏切らないボロさだ 正直こんな家に入れるのは申し訳ないし恥ずかしい 飛鳥は鞄を置いてキッチンに行って飲み物を入れる