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夢現

「母様!見てください!花冠を作りました!」 小さい子供がふたつの花冠をもちベットに横たわっている女性の元へと駆け寄る。ぽふんっ、と音を立てながらベットに飛び乗った子供は大きい方の花冠を女性に見せた。 「あら、とても上手に出来たわねぇ」 「はい!父様と一緒に作りました。父様はとてもお上手で凄いです!」 「ふふ」 父親が作っている場面を思い出したのか頬を紅く染めながら笑顔で話す。子供は花冠を母親の頭にのせ、もう一つを大事そうに抱えた。 「これは母様にプレゼントです。もう1個は僕の弟の分です。」 「ありがとう。この子も嬉しがってるわ」 母親は金髪の柔らかそうな子供の頭を撫でたあと自分の膨らんでいるお腹を撫でた。そこにはもう一つの命が授かっていた。 子供は、母親に抱きつくようにお腹に耳を当てる。 「早く生まれてきて欲しいです。お兄ちゃんになって色々なこと教えてあげるんです!」 「そうねぇ。きっと貴方は立派な兄になるわ」 「当たり前です!僕はお兄ちゃんですから!」 母親はおかしそうにくすくすと笑った。愛おしそうに子供の頭を撫で、抱きしめる。子供も嬉しそうに抱き締め返した。 *** 「………はっ。」 目を開け見えたのは先ほど自分が気を失うようにして倒れ込んだベットだった。 とても嫌な夢を見た気がする。自分には到底有り得ない優しい夢。吐き気がする。 汗をかいたのか体もべとつく。はぁ、とため息をつき髪をかきあげるようにして触れた頬は、濡れていた。 「とりあえず、水浴びるか。」 換えの服を用意して、水場に行く。そこに置いてある鏡には人相の悪い男がひとり映りこんだ。色素が全て抜け落ちた白髪、細いからだ、中でも一際目を引くのは異様に煌めく赤い目。 「あー、くそ。やっぱ三徹はダメだな。仕事に身が入らねぇ。今日は寝てやる」 そもそもたかが魔獣が出た如きで俺を呼ぶなって事なんだよ。しかも低能な奴だったし。それ倒して金もらってる俺はなんも言えないけどな。 「竜とかでりゃ金になるのに……。」 ベットに横たわり欠伸を咬み殺す。今日は仕事は1件も入ってないから寝れる。さっきは本当に嫌な夢だったが、今回は大丈夫だろう。夢を見る間もなく深く眠れる。 「リドウェン!起きてー!ご飯ちょーだい!リドウェンー!!」 「あーもう!うっせぇ!」 あと少しで深い闇の中だったのにうるさい鳥の声に遮られた。声の方を睨むと鳥籠の中に小さな白い鳥がいた。小さな愛くるしい格好をしているが、あれでも魔獣だ。まだ、子供だが。 「魔獣なんだから、その鳥籠くらい壊せんだろ。勝手に漁っていいから勝手に食べてろ」 「オレはそんな野蛮な子じゃないよー。それにオレまだ子供だからそんな力無いしー。」 「はぁ。」 重いからだを動かして、キッチンから木の実を取り出し平たい皿の上にだした。そして、小鳥が入っている鳥籠を開けると小さく羽ばたきながら小鳥が腕に止まる。 「アーン!」 「はいはい。あーん」 「おいし!これはなんの木の実ー?」 図々しい小鳥だ。自分で食べればいいのに。それに木の実なんて一々確認して取ってない。昔俺が食べて大丈夫な奴しか取ってないから死にはしないはずだし。 「あ?しらね」 「え……。ま、いいやー」 「ん」 「そういえばさー。オレ捕まえた時から魔獣、魔獣言ってるけどなんなのそれ?」 小首を傾げるように俺を見たこいつを変な目で見た俺は悪くない。啄かれたが痛くないので無視しておく。そもそも、俺にというか俺たちにとってはそんなこと当たり前なんだ。 「は?お前そんなことも知らないのか?……いや、名称も人間が勝手に付けたものか……」 「んー?」 「……魔獣って言うのはお前らみたいに動物の姿形をしているのに言葉を話す奴らのこと。魔獣の中にも上下があって、言葉を片言にしか話せない奴は下、能力が低い、人並に話せるやつは上、能力が高い。だから、お前は子供でもそこまで話せんなら大人になったら高能力魔獣になんじゃね?」 「え!ほんとに!オレすごー!」 「はいはい。それで、その魔獣たちの頂点に立つ4匹がいる。そいつらは魔獣じゃなくて四神って呼ばれる。姿が伝説ならまぁそう呼ばれるよなぁ」 「んー?どんな姿なのー?」 「あー?確か、ドラゴン、ユニコーン、フェンリル、フェニックスだったような」 昔どこかの文献で読んだ気がする。どこでかは覚えてない。 そういえば、こいつバカそうだし聖獣についても話した方がいいか。 「お前、聖獣についても知らないだろ」 「あ!馬鹿にしてるでしょー。知らないけどー」 想像していた通りの答えに微かに笑う。小鳥が固まり、俺の顔をじっと見つめる。 「聖獣っていうのは、人と契約した魔獣のこと。聖獣は色々できるようになるが…1番の変化は人型になれる」 「へー」 「あまりいないが、聖獣を奴隷の様に扱う奴もいるからお前も気を付けろよ」 小鳥を腕から掌に乗せ、鳥籠に戻す。素直に鳥籠へと入っていく姿は普通の鳥にしかみえない。だが、俺の言葉を聞いた途端驚いたように俺を振り替えった。 「え?俺を聖獣にしないのー?リドウェン」 「なんで俺がお前を聖獣にするんだよ。それに聖獣はひとり一匹しか持てねぇんだよ。誰がお前みたいなか弱い奴と組むか。俺には強い奴が必要なんだよ」 「それは、仕事のため?それとも、リドウェンの目的の為?」 「…………俺の仕事は魔獣退治だ。お前を聖獣にしたら怪我するだろ」 「照れ屋さんなんだからー」 「うるせ」 軽く小鳥を睨みベットへと潜り込んだ。小鳥が歌を歌い出して少し迷惑だが耳障りにはならないからまぁいいだろう。これでやっと、寝れる。 「リドウェン、きっと守ってみせるから。どうか、今はお眠り。安らかな眠りを」 小鳥の歌が部屋を包み、柔らかい風がふわりとリドウェンを撫でた。

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