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鳥籠

「リドウェンー!あーさーだよー!あーさー!」 「………今日の夕飯は鳥の唐揚げか?」 「ひっ!食べようとしないでよー!起こしてあげただけじゃないかー!」 寝れたが目覚めが最悪だ。鳥の声で起きるなんて。あの後、1度も起きずに次の日を迎えたらしい。朝日が目に染みる。 「あー、と。今日は確か街に襲いに来た魔獣に壊された家を直すんだっけ…」 「リドウェンってさ、何でも屋なの?」 「あ?ちげぇよ。俺はれっきとした魔獣退治屋だ。けど、ここの人には世話になってっからな…」 ふーん、といいかながら興味も無さそうに鳥籠の中でぴょんぴょんと飛び回る。そして、ちらりとこちらを見てバタバタと羽を動かした。 「ねぇ!ねぇ!オレも一緒に行きたいー。外に出たいよー」 「お前が外に出たら一瞬で猫に喰われるぞ」 「そこは、ほら、軽く躱すよっ!」 「めんどくさい」 「ねっ!ねっ!おーねーがーいー。邪魔にならない様にするからー!リドウェンの頭の上にちゃんと乗ってるからー」 ピーチクパーチクと鳴くこいつは意地でもついて来る気だ。連れていくのはめんどくさいが、このままにしておくのも少し可哀想、だな。 「はぁ。分かったよ。勝手に付いてこい」 「ほんと!やっぱりリドウェンは優しいねぇ」 「っ俺は優しくなんかねぇ!………わり。」 優しいという言葉に頭で考えるよりも先に体が過剰に反応した。口を手で抑えるけど、出てしまったものはもう取り返せない。 俺をなんのしがらみもなく見てくれるのはここの人達や、この小鳥だけなのに。 「リドウェン、大丈夫だよ。オレはなんも気にしてないよ。ねぇ、もう行こ!そろそろ時間でしょー」 「………そ、だな」 鳥かごを開け、小鳥を肩に乗せた。頬に擦り寄ってくる小鳥に自然と笑顔になる。 「じゃあ、行くぞ。よそ見してて落ちるなよ」 「大丈夫!」 家から出るとさらに強い日差しが降り注ぐ。それから逃れる様に小鳥が首に寄り添ってくる。 街に行く道すがら小鳥が色々と質問をしてくるのに返しながら考える。 この暖かさはいつまで感じていられるんだろうか、と。 成長して、俺の手から離れていき誰かの聖獣になるんだろう。こいつは俺じゃ敵わない力を持った奴の聖獣になるはずだ。俺の側にいるのなんてあと少しに違いない。 「あら!リドウェンじゃない。今日はこっちで仕事なの?」 「あぁ、アリーさんか。こないだ魔獣が暴れただろ。だから、街の人達から家を直してくれって依頼が多く来てさ」 「へえ。じゃあ、終わったら私の所に来な。晩飯食べさせてあげるよ。どうせ一人だとろくなもの食べないでしょ」 「……ありがとう」 笑いながらアリーさんは俺の前から離れていった。アリーさんを見送りながら、小鳥が俺に囁いた。 「あれ、誰?」 「アリーさんだ。俺がこの街で住むのにいろいろ手配してくれた人。いい人なんだけど、まだ彼氏はいないらしい。そろそろ結婚適齢期もすぎる頃とかこの間呟いてた気がするけど」 「それはべつに言う必要なかったよー!でも、アリーさんかぁ。どっかで見た事あるような?」 小鳥は不思議そうな声を出しながらもずっと俺の肩に乗っていた。少しまた歩いて町の中心部に行くと確かに屋根が取れている所や、家の一部が破壊されている所があった。 「リドウェン!ありがとうな来てくれて!俺らだけじゃ人手が足りなくってよぉ」 「いえ、暇なんで大丈夫です」 「そう言って貰えるとありがたい。って、お?今日はなんか連れてんな」 「鳥籠の中に入れていたらうるさくって。邪魔にならないようにするんでいいですか?」 「俺らが来てもらってんだ。大丈夫に決まってんだろ」 「ありがとうございます」 大工の人達が俺の周りを囲み、バシバシと叩いてくる。多少痛いがまあ、悪気があるわけではないから致し方ない。 「お前らー!休んでないで動けー!」 遠くから棟梁の声が聞こえてくる。それにアリの子を散らすかのように周りにいた人がいなくなる。俺も腕まくりをして動き出すと、小鳥が肩ではなく頭の上に移動した。

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