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東高の情勢→sideT
橘病院は、駅前から少し入ったとこにある病院で、開業医にしてはかなりでかい病院である。
科も総合病院に近いくらいあるので、総合病院からの下請けみたいなこともやっているらしい。
「あ、シロ、報復とかまだあるんかな。今のとこ、ヤスを1人にさせねーようにしてんだけど」
「そっか。えーと、たけおは玉砕済だし、あとは、ウッチーのトコだけど、ウッチーはそういうの好きじゃないからな。元々、今のトップのハルちゃんが、トール君潰したら次のトップとかいいだしたからなんだけど」
「はた迷惑だな」
おもわずついついため息が出てしまう。
「ハルちゃんって、いつも、絡みにくるアイツらかな、でけえリーゼントと糸目…………」
思い出したように、康史は呟く。
「士龍がトップになるって言わないから、だぞ。言えば、オマエに敵うやついねーんだから、そんなややこしいことおこんねーんだからな」
ムスッとした顔で、虎王はボソリと言葉を繋げる。
「ヤだよ。トップとか。面倒くさいじゃん……もっとたくさん助けにいかなきゃならなくなるし」
「だからよ、いつもいうけど、ぜんぶ自分だけでやらねーでいいんだって!」
ムッとして言い返す虎王を士龍はわしゃわしゃと撫で回している。
「とりあえず、ハルちゃんとこが動かなきゃ大丈夫!」
士龍は明るく答えるが、それはまだ大丈夫とは言えないな。
「ハルちゃんって奴が卒業するまでは、安心できねーな」
康史はそうだなーと、肩を落として呟く。
やっぱり部屋でひとりでいるのはつまんねーよな。
もうすぐ免許もとれるし、なるだけ一緒に外に出る時間をつくろう。
こんなに、一緒にいれる時間はもうないだろうしな。
「俺がハルちゃんに、トール君たちに絡むのやめろというのはおかしいしな」
「まあ、平気だ。やってきたら返り討ちするしな」
「だねえ。ハルちゃんは、俺より弱いからダイジョブだよね」
「オマエが一番つええんだっけ、シロ」
中学に上がる前に引越しが決まって、1人でも戦えるようになりたいと、戦う方法を教えてくれっていってたな。
「師匠の教えがよかったからだよ。カラダでっかくなっただけで、喧嘩の仕方はトール君に教えてもらったのを忠実に再現してるだけだもん」
「頑張ってんな!弟子よ」
俺は振り返って、親指をたててやる。
士龍は笑って親指を立て返してきた。
ようやく橘病院に着くと、虎王は士龍を支えるようにして寄り添って病院へ入っていった。
まあ、ヤツらなら大丈夫だろう。
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