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遊園地→sideT

康史をタンデムに乗せて、海沿いの道を風をきって走るのはすごく気持ちいい。 朝早くだったのもあり、道はそんなに混んでいない。 ここまできちまえば、まさか絡んでくる輩もいないだろうし、遊園地にいくだけだ。 夏休みから結構日にちはたっちまったけど、康史も受験勉強もあったしな。 遊園地のエントランスを見ると、平日にもかかわらず結構なひとたちの姿が見える。 駐車場に入り、バイクを停めると康史からメットを受け取る。 どことなく、康史の顔が緩んで柔らかく見える。 嬉しいんだな、と思うと、今日はここに来て本当に良かったとこころから思える。 エントランスで並んで中に入ると、異世界感のようなどことなく非日常の世界のようだ。 「……で、何乗る?」 「トールは、絶叫系ダイジョウブ?」 「乗ったことねーからな。わかんねーや」 遊園地自体に、あまり思い出はない。 1度だけ家族できたが、散々だった。 康史は、オンナ連れてよく行ってたのを覚えてる。 「まあ、トールには怖いもんはねーだろうから、ここの絶叫系乗れるだけ乗るか」 「ヤスは好きなんか?その、ぜっきょー」 「結構好きかな。まあ、スリルとかなら、トールの本気の走りのタンデムには負けるよ」 まあ、ドSだしな。 もしかしたら、隣に乗せたやつの恐怖の顔を楽しみたいのかもしれねえや。 納得しながら、長蛇の列の一番後ろに並ぶ。 今日は天気がいいから、あんまり寒くねえのはありがたい。 「なんか、こうやって2人で並んでんのって、新鮮だな」 嬉しそうに呟く康史に、俺はなんだか満たされる。 こーいうとこは、苦手なんだけどな。 「夜はさ、キラキラするパレードとかあるんだけど、見る?」 期待をこめて俺に提案する康史に、俺は軽く頷く。 「一日中遊んだって、明日も教習ねえし。」 「ありがとな。それじゃあ待ってる間に何か食う?そこで、買ってくる」 康史は、たったったと屋台のような食い物販売のカートに向かっていってしまう。 片手に包みを持って康史は戻ってくると、紙包みを掴んで俺に渡す。 いいニオイだな。 「はい!食べて」 はたして、これは、なんだ。 香ばしいニオイにつられて、袋をかさりとあけると骨付き肉のようだった。 「うを、うまそうだな!ありがとな」 「トールは、こーいうの好きだよな。待ちながら食おうな!」 記憶をなくしてから、こんな本気の笑顔見れなかったしな。 ほーんと可愛いし。これは堪能しとくべきだな。 俺は肉を味わいながら、康史の笑顔も満喫していた。

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