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遊園地→sideT
いくつか絶叫系マシンに乗ったが、まあまあ楽しめた。
ちょっと必死そうな可愛い康史の顔も見れたしな。
「マジで全く怖くねーのかよ。トールの顔平然としすぎでつまんなすぎーっ」
コースターの途中で撮影されるらしく、康史はその写真を買って面白そうに笑う。
「まー、こーいうのは基本的に死なねーようにできてっし。何かあったら、オマエを助けねーとだからな、叫んでられねーな」
滑車が外れたりとかはまあないとは思うけど、そういう危機管理も大事だよな。
「なんだよ、なんかあったら、助けてくれんの?」
「おう」
康史は面白そうに笑い、俺の背中をぽんとたたく。
「頼もしいけど、遊園地くらい気を抜いててもいいからな」
「……おー、分かった」
「昼メシ、そろそろ食べるか。買い食いはしたけど、ガッツリ食べたいだろ」
康史は、地図を見て綺麗な建物の間を歩きながら食い物やがねえか物色している。
「あの…………おふたりですかー?良かったら一緒しません?」
ちょっと高めな女の声がかかり、仕方なく俺たちは立ち止まる。
地元で2人で歩いていても、俺の悪い噂のせいかしらないが女に声をかけられることはまずない。
華奢な感じの綺麗な顔をした2人連れの女の子で、多分、少し年上で大学生って感じである。
しゃべるのは苦手なんで、ちらと康史になんとかしろという視線を送る。
康史は、軽く面倒そうな息をつくとよそ行きの笑顔を貼り付けて、
「ゴメンネ。俺たち、絶叫マシン巡りしてるから」
「あ、私たちも絶叫系大好きなんです!!是非一緒にどうですか」
多分、自分たちに自信があるんだろうな。
康史がさらに面倒そうな顔をするのが横目でわかる。
「…………悪いけど、今日は2人でまわりたいんだ。また、機会があれば……」
「じゃあ、連絡先ください」
めげないなーと、俺は一歩引いて康史をみまもる。て
まあ、モテ王子だから、仕方ないけどな。
康史は手馴れたように、ポケからメモ帳を出してLINEのIDを手渡して女の子たちに軽く手を振って、俺の肩を叩いて歩き出す。
「マメだよな……」
「LINEくらいはなー。誠士にでも紹介してやろうかな」
したたかに言ってのける康史に、俺は肩をそびやかした。
「ちぇ、ちょっとは妬いてくれないの?トール」
「そんなことで、妬いてたらキリねえだろ。昔のヤスのオンナ遊びひどかった時も散々見てるし」
「自業自得、だな」
肩を落とす康史の頭をワシャワシャと撫でて、腕をとると手を握ってコートの中につっこむ。
「オマエは俺に首ったけだって、わかっているからな」
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