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卒業式予行→sideT

「案外、顔に出るんだな。日高って、もっと余裕そうだと思ってた」 東山が波砂が去る背中を見やりながら康史へと、言葉をかける。 「な、にが?ヒガシ」 康史の顔がちょっと機嫌悪さが表に出まくりの、剣呑な表情になっている。 「まるっきり、嫉妬深さを出しまくり。ホント。もっとクールな王子だと思ってたのにさ」 「王子ねー、あんま、それ俺に似合わないよ」 東山にいいながら、座っている俺に視線を落とす。 「波砂と、何話してたの?」 「いや、県外にいくから下宿するってくらいだぞ。ヒガシも一緒に話してたし。なんだよ、心配してんのかよ…………」 馬鹿だなと思いながら、腕を伸ばして頬に軽く手をやる。 心配そうな顔は好きだけど、そういうのはいらねえな。 「心配ではないけど…………ちょっとイラッとしただけ。予行終わったら、お仕置きだからな」 低い声で告げられて、 「ちょと、まてまて、ヤス。俺ァ、ナズと話すだけで毎回お仕置きとかはイヤだぞ」 思わずガバッと起き上がり、思わず声をあげてしまい、周りの様子を見回して声を少しひそめる。 波砂は今じゃいい女友達だとは、思っている。 「ま、というのは、きっかけなだけ。最後に、学校でしたいなあって…………だめかな?」 甘えるように伸ばした俺の手を掴んで、可愛い顔で目をキラキラと潤ませてお願いされたら、なあ。 うーん。 迷うように視線をさまよわせると、康史は掴んだ手に唇をチュッと押し当てる。 「トールと、学校での思い出、もっと欲しいな」 ドン。 これは、断れねえよな。 まあ、バレなきゃいいか。 「予行、終わったら…………な」 ついつい、承諾してしまうのは、本当に俺は康史に弱すぎる。 「OKしちゃうんだ…………」 全部聞いていた東山が、俺らを見やって嘆息しているのを横目に、康史がしてやったりといった表情を浮かべているのを見て、俺はまたやっちまったなと、1人机に突っ伏した。

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