316 / 405

卒業式予行→sideT

眠いなと思いながら、康史が読み上げる答辞のさわりを聞いたり、順番を確認する作業はひたすら、暇につきた。 まあ、普段なんの力にもなっちゃいねえんだけどな。 漸く予行が終わり、教室へ帰ると簡単なHRが開かれ担任が卒業式の説明を聞いたり、成績表を先に渡されたりする。 まあ、適当に喧嘩しまくってて何をしたわけでもねえけど、卒業だけはちゃんと出来て良かったよな。 ぼんやりしてると、机の傍に康史がやってきて、小さい鍵をチャラチャラさせている。 「理科準備室の鍵、借りたから、いこ?」 「誰に?」 「えーと、…………うーんと、化学のユリエ先生」 歯切れの悪い口調でモゴモゴと白状する。 美人で有名な化学の先生である。 コイツ、前にその女に手ェ出してたよな……元カノ使うかな。こいつこそお仕置きの上で万死に値するんじゃね?とか思う。 まあ。使用目的大体分かってるのに、鍵を貸す先生も先生だよな。 「分かってんよ。別にオマエ疑っちゃいねえ。細けえことは、気にしないしな。うら、いくぞ」 俺は椅子を蹴るようにして立ち上がると、康史の腕をぐいとひっつかむ。 最後の思い出ねえ。 まあ、俺はいつだって、康史と一緒にいたし、それが中学だろうが高校だろうが別にどこでも一緒だった。 「トール。チョッ、いたい」 「悪い」 少し強く握り過ぎちまったかな。 理科準備室は、地下1階の薄暗い隅の部屋だ。 階段を降りていく間に、俺の気持ちはそっちの方にシフトしていく。 なんだかんだ、流されやすいってのはあるけど、全部コイツの願いだからだ。 準備室の前にくると、俺は鍵をあける康史の後ろについて、薄暗い部屋の中に入った。 康史は、俺が中に入ったのを確認すると後ろ手で鍵を閉めて密室にした。 「学校でとか、メッチャ興奮するな」 背後から俺の胸元に腕を回して抱きついてくる康史に、俺は鼻先で笑う。 「馬鹿だな。場所なんか関係ねえよ。俺ァ、ヤス、オマエとヤるのは、どこだって興奮してんだよ」

ともだちにシェアしよう!