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卒業式予行→sideT
眠いなと思いながら、康史が読み上げる答辞のさわりを聞いたり、順番を確認する作業はひたすら、暇につきた。
まあ、普段なんの力にもなっちゃいねえんだけどな。
漸く予行が終わり、教室へ帰ると簡単なHRが開かれ担任が卒業式の説明を聞いたり、成績表を先に渡されたりする。
まあ、適当に喧嘩しまくってて何をしたわけでもねえけど、卒業だけはちゃんと出来て良かったよな。
ぼんやりしてると、机の傍に康史がやってきて、小さい鍵をチャラチャラさせている。
「理科準備室の鍵、借りたから、いこ?」
「誰に?」
「えーと、…………うーんと、化学のユリエ先生」
歯切れの悪い口調でモゴモゴと白状する。
美人で有名な化学の先生である。
コイツ、前にその女に手ェ出してたよな……元カノ使うかな。こいつこそお仕置きの上で万死に値するんじゃね?とか思う。
まあ。使用目的大体分かってるのに、鍵を貸す先生も先生だよな。
「分かってんよ。別にオマエ疑っちゃいねえ。細けえことは、気にしないしな。うら、いくぞ」
俺は椅子を蹴るようにして立ち上がると、康史の腕をぐいとひっつかむ。
最後の思い出ねえ。
まあ、俺はいつだって、康史と一緒にいたし、それが中学だろうが高校だろうが別にどこでも一緒だった。
「トール。チョッ、いたい」
「悪い」
少し強く握り過ぎちまったかな。
理科準備室は、地下1階の薄暗い隅の部屋だ。
階段を降りていく間に、俺の気持ちはそっちの方にシフトしていく。
なんだかんだ、流されやすいってのはあるけど、全部コイツの願いだからだ。
準備室の前にくると、俺は鍵をあける康史の後ろについて、薄暗い部屋の中に入った。
康史は、俺が中に入ったのを確認すると後ろ手で鍵を閉めて密室にした。
「学校でとか、メッチャ興奮するな」
背後から俺の胸元に腕を回して抱きついてくる康史に、俺は鼻先で笑う。
「馬鹿だな。場所なんか関係ねえよ。俺ァ、ヤス、オマエとヤるのは、どこだって興奮してんだよ」
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