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卒業の朝 【完 】→sideT

「トール、制服。玄関のとこに置いてあるから」 康史はバタバタと用意をしながら、クリーニングに出した制服のありかを教えてくれる。が、とりに行く気が俺には皆無だ。 ダルい。 このレベルだと、俺以外なら死んでるに違いねえ。 まだ、なんか、頭がぼんやりしてる。 ここ2日くらい、激しかったセックスの後遺症なのか、意識がぼやぼやしていて、身体は回復したのだが、脳みそは酸素不足みたいな状態になっている。 携帯を見ると誠士から、帰りに待ち合わせしようぜとメールが入っている。 3年間短いようで、長かったようで、短かったような、そんな感じだ。 「セージが、帰り一緒に帰ろうってよォ」 「わかった。それより、そーんな、ゆっくりしてたら遅刻するぞ。いつものように、遅刻できねーんだからな」 シャツ1枚着てだらだらとコーヒーを啜っている俺に焦れたのか、康史は玄関から俺の制服を持ってきて袋からだして、タグをはずしはじめる。 「ヤスは答辞読まないとだしなァ。修学旅行とかいかなかったけど、高校楽しかった。勉強して、オマエと一緒にいけて、良かった。ありがとな」 「なんだよ、急に。もーっ、卒業式の前に泣かすな。そーいうのは、式が終わってから言うもんだぞ」 制服を俺に渡して、ちょっと怒った様子で俺にかえす表情が、照れてるのか、泣きそうなのか、分かりにくい。 はいと手渡されたスラックスを履いてベルトをとめると、適当にネクタイを結んでブレザーをひっかける。 「卒業式くらいは、ネクタイちゃんとしろよ」 笑いながら康史は俺のネクタイをきっちり締める。 柄じゃないんだけどな。 苦しくなって、ネクタイを指で解きたくなるが、じっと睨まれる。 「少しはガマンしろよ。」 「へーへー」 ペッタンコのカバンを手に持つと、俺は玄関に向かう。 「ちょ、と。トール、置いてくなって!」 慌てて制服をととのえて、カバンを手にして追いかけてくる康史の足音を聞いて口許が緩む。 先のことなんざ、わかんね。 だけど、この日常が、ずっと続いていくように。 俺達の道が続いていく限り、それを守っていきてえ。 俺は振り返って、玄関まで慌ててやってきた康史に笑いかける。 「忘れモンした」 顎へと手を伸ばして綺麗な顔を、じっと見返し唇を合わせチュッと吸い上げる。 「……行ってきますの、チューな」 ちとだけ、気恥しくなって照れながら呟き、勢いよく玄関を駆け出す。 今日は、いい天気だ。

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