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【番外編】プロム →side Y
「ぷろむ?なんだ、それ、うまいんか?!」
学級委員から、クラスで卒業プロムをしたいからと、呼ばれたのだが、案の定少年マンガの主人公のような、本気で言ってるのか疑わしい台詞が返ってきた。
多分、まあ、本気だろうけどな。
「卒業パーティだよ」
「…………パーティか。……そんなの、俺行っていいのか?」
半信半疑の表情で首を傾げる。
そういや、クラスの行事とか呼ばれたことないもんな。
俺も東流呼ばないなら行かないを通していたけど。
昔は反対だったっけ。
遊びに誘われないのは、俺の方だった。
「イイに決まってんだろ。ヒガシと委員長の河原が仕切ってんだし。服はこないだプレゼントしたやつ着てよ。すごく可愛いから」
「お、おう。じゃあ、それ着る」
ちょっと照れた様子で言うと、クローゼットから1式取り出して着替え始める。
俺は東山に、東流と一緒に行くと返信して、自分も着替え始めた。
「アメリカだと、ダンスパーティだけど、言葉だけで普通のパーティだからさ」
「よくワカンネーけど、まあ、オマエと一緒に行けるのは嬉しいぜ」
車を駅前に止めて、小さな洋食店を借り切ったと言っていたので、その店に入っていく。
「きゃー、日高くん!!こんばんわ!」
「カッコイイ!」
「日高、私服までオシャレかよ。くそお、俺らに勝ち目がねー」
クラスメイトたちは、ドアを開けて入るなり声をあげる。
女の子たちは、ちょっとしたスプリングドレスや、ワンピースを着ていて、いつもより着飾っている。
「こんばんわ。そんなこと言って、皆オシャレしてるじゃない」
少し中に入り、中の雰囲気に気後れしている東流の腕を引く。
「ハセガワ………君………カッコイイ」
周りの女子達の視線が、ちょっとむかつく。
やっぱり、普通のカッコでこさせれば良かったかな。
「東流、私服初めてみた。なんか、意外におとなっぽいな、やっぱりイケメンだし!あ、そのへん座れよな」
東山は、東流の肩をパンパンと叩いて、椅子を指さす。
「お、おう。コレはヤスがプレゼントしてくれた」
嬉しそうな顔でスプリングコートを脱いでハンガーにかけると、東流は椅子に座る。
なんつー顔してる…………。すぐ連れ帰りたい。
「相変わらず、ラブカップルだなあ」
東山相手に話す東流は、緊張がなくなったように無邪気な表情をしている。
こんな様子は、やっぱり人には見せたくないとか思う俺はこころが狭い。
ビュッフェスタイルだし、肉でも運んでやるかな。
席を立った瞬間に腕をつかまれ、女子の輪の中に入り引きずり込まれる。
「日高くん、一緒に写真撮ろう!」
そして、やはり卒業式予行の日と同様に邪魔は入るのだった。
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