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【番外編】プロム→sideT

康史が、女の子たちにさらわれてしまったので、俺は東山やクラスの男子と談笑していた。 あまり、男子も近寄ってこなかったしな。 「中学の時とかさ、めっちゃ噂だったぞ。1人で東高に乗り込んで潰してきた猛者がいるって」 「だってなあ、ヤスが捕まったし」 俺がポテトを食べながら、モゴモゴ言うと、東山は飲み物を持ってきてくれる。 「東流も日高といるから霞むけど、イケメンだよな。いーの?男同士とか想像つかんのだけど」 何故か俺の皿の上に、山盛りの食い物が置いてある。 みんな、俺に気を使ってくれてんのか。 「んー、まあ、イイよ。ヤスだし」 俺の答えに、おかしそうに奴らは笑いながら、コーラをつぎたしてくれる。 「コークハイだよ。ちょっとお酒まぜちゃった」 「俺、あんま酒、強くねーよ」 「まあ、俺らは、ハセガワって、ずっと怖い人のイメージで話しかけられなかったんだけどな」 「んーん、別にヤスになんかされなきゃ、俺は何もしねーけどな。ヤられたら、ヤりかえすけど」 適当に相槌を返しながらコーク杯を飲んでいると、俺達の間にいつの間にか女の子たちが入ってきた。 「長谷川くん、楽しんでる?」 声をかけてきたのは、確か夏休みに花火であった子だな。 玲奈とかいったか。 うろおぼえだ。 「あ、ああ……」 「ねえ、夏祭りの花火の時には、もう、日高君とはデキてたの?あれから聞く機会なくて」 めんどくさい事を聞いてくるなあと思って、東山の方を眺める。 「あ、そうだな。…………デキてた」 「なんだ。良かった。あたしがモテないのかなって自信なくしてたのよね」 ほっとする様子を眺めて、俺は軽く笑い、 「普通にモテるだろうから…………落ち込ませたならゴメン」 「でも、意外よね。ハセガワ君って、乱暴なイメージしかなかったから。」 事実ヤクザとも殴りあうし、そうなんだし、気にはしてない。 「純情っぽいって、女の子の間で有名になったよ。カムアウトから」 玲奈はむしろ好奇心まるだしで、俺を見る。 どこをどうしたらそうなるからわからないが、純情にはほど遠いな。 「トール、楽しんでる?」 無理やり玲奈との間に入ってくると、これみよがしに俺の腰に腕を回してくる。 きゃーっと、端っこにいる女子たちが嬉しそうに、写メしたりしている。 「ああ。たくさん、話したぜ」 ちょっと調子に乗って、隅っこにあった酒にも手を出したが、俺のご機嫌さに、康史は少し笑みを浮かべて、俺の頭をわざわざとなでる。 ふー、気持ちいいなあ…………。 「トール、酔ってる?」 俺の様子にはっとして気がついた康史は、周りを見回す。 「おいおい、酒はダメだぞ。プロムなんだからな」 周りに軽く説教をしている。 本当は誰よりもマジメで、誰よりも心配性なんだよな。 俺はふわふわしてきて、康史にもたれかかりながら、目の前のオレンジを掴んで齧る。 「ったく、そんな顔してると、家まで持たないからな」 俺はなんだか嬉しくなって、オレンジのついた指先で康史の唇を撫でて、周りに人がいるにもかかわらず、チュッと唇に吸い付いた。 「センセー、ハセガワ君と日高がイチャイチャしてまーす」 やんややんや言われて嬉しくなって、そのまま俺は康史を抱きしめた。 【プロム END】

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