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【番外編】卒業旅行→sideY
海パンに着替えて、東流のピアスを取ってやったりしてから、プライベートビーチ側のホテルの出口へいくと、士龍たちはすでにボールや浮き輪に空気をいれて待っていた。
「あは、あんま遅いから1発かましちゃってるかと思ったよ!」
士龍は歯に衣着せぬもの言いで、笑いながらボールをとんとんと弾いて言う。
「あー、トールのチクピー外すの時間かかったんだわ」
俺が東流を指差して説明すると、ああーと、理解したように士龍は東流を眺める。
「やっぱし、トール君のカラダって、メチャ鍛えてあるから凄い綺麗だなー」
「シロ、性的な視線投げるの禁止ね」
俺は士龍の額を軽く小突いて、ダメだよーとゆびでバツをつくる。
「え!まって、まってそんなんじゃないし!!滅多なこと言わないでよ」
焦る士龍は、背後でむっすりしている虎王を気にしているようだ。他の人なんかをあまり気にしない性格だが、そこは恋人となるとやっぱり違うんだなと、改めて思う。
東流はどこ吹く風で俺らの言い合いを気にせず、風に吹かれながらザクザクと砂浜を歩いていく。
「日高さんさ、あの人を抱いてるんだろ?その気になるのか?」
虎王は不思議そうに、東流の背中を見ながら問いかける。
「康史でいいよ。反対に、トールにしかホントの意味でその気にならないよ。タケオ君はどうなの?どっちがどうかわかんないけどさ」
まあ、士龍の性格からいって、自分からガッといくような感じじゃないしな。
それ言うなら、君もたいがいだからね。
「あ。ああ。士龍は、ガタイとか関係なくて、なんかさあ、可愛いから、さ」
少し俯きがちに低い声で呟くのは、なんとなく照れているんだろう。
「それは、俺も一緒だよ。俺にとっては、トールがめちゃくちゃ可愛いからね」
ふと笑い返すと、虎王はそんなもんだよなと返して、でっかいボートをすでに膨らませたのかドヤ顔で担いで手招く士龍の方に、駆け出していく。
俺も、東流の方に近寄り後ろからぐっと抱きついた。
「なあなあ、トール、海で一緒に溺れないか?」
東流は、少し訝しい顔をして俺を見返すと、しばらく意図を探る表情を浮かべてから、ふっと笑い返す。
「そのお誘いに乗るのは、まだはええな。あっちのちっさい島まで、俺に遠泳でついてこれたら考えてやろうか?」
指差したのは、500メートル以上先にみえる岩に似た島のようなものだった。
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