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【番外編】卒業旅行→sideT

頭の中がぼーっとしている。 口の中に詰められた海パンを噎せながら吐き出すと、康史はそれを海水で洗ってくる。 月あかりが、やけに眩しい。 全身砂まみれで汗にくっついてベタベタして気持ちわるいのに、なんだか満たされていて、フワフワしている。 「タオルもってくれば良かったけど、そんなん考える余裕なかったしな」 脚をあげてと言われて海パンをはかせてもらいながら、俺は康史の肩に腕を引っ掛けて抱き寄せる。 たしかに、ここにいるんだ、と実感する。 ここにいる、証がほしくて仕方がなくて…………。 体温がほしくて、背中へと腕を移動して力を込める。 「ン、もう。可愛い顔しないでよ。明日起きられなくなっちゃうから、今日はここまでだからね!」 康史は勘違いしているのか、宥めるように俺の頭を撫でて頬に唇をくっつける。 「…………オマエがいて、ヨかった……」 あの時見つけられて、良かった。 一瞬でも遅れたら、と、考えるだけで肝が冷える気持ちだ。 「怖かったの?震えてる」 背中を抱き返されて、素直に頷く。 オマエを失くすことが、前に俺の恐怖だと何度か伝えたから、分かってくれたようだ。 「…………大丈夫、トールがいるから。もっと優しく抱ければいいのに、ゴメン」 「イーヨ…………やさしかったら…………夢だと、間違う……」 「ちょ、と、どういう意味?」 「ひどくされる方が、ほんとのオマエだなって思うからさ。ヤス」 「認識ひでえな。こんなに愛してるのにさ」 不服そうに唇を尖らせ俺の背中を撫でる。 俺は目を閉じて、知ってると呟いて再度抱きしめ直す。 隙間から覗く月と波打ち際の泡がとてもキレイだなどが思う。 綺麗だけど、…………おっかない。 「…………海の底に、攫われちまっても、どこまでも助けにいくけどな…………たすけられないとこには、いかねーでよ」 いつか、時が過ぎて、そんなとこに連れていかれちまうかもしれねえけど。 それでも…………。 「…………バカ、いかねーよ」

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