377 / 405

【番外編】入社式→sideT

4月1日、エイプリルフール。 と、言うわけで新調したこの先着ないだろうスーツとやらを着て今日から勤める会社に向かう。 っても、康史がまだ入学式まで暇だからと、わざわざ車で送ってくれた。 倉庫とでかい駐車場に社屋がついていてそれなりにでかい。 オヤジのツテで決まった会社だし、あまり恥をかかすわけにはいかねえし。 頑張ってと笑顔で門の前で見送られた手前、頑張らないわけにはいかない。 あまり、バイトも長くはやらなかったので、なんだか変に緊張とかしている。 髪の毛もまた黒くしたが、そんでもスーツは似合わないよな。 社屋に向かい受付で名前を言うと、2階まであがるように指示される。 すれ違う社員らしき人らは、しっかりしたガタイのいい奴らばかりで、採用がそういう基準ならうまくいくかもしれないなとか思う。 二階にあがると案内担当の女性社員に面接をした部屋へと通されて、椅子に座るように言われて腰を降ろす。 何人か先に来ていたのか、やはりガタイのよさげな高卒らしいスーツの男が3人ほど入ってくる。 2人は知り合いなのか、2人でこそこそと話をしているが、俺にはやはり知り合いはいない。 「あ、アンタも1人?地元とはいっても同じ高校からとかってめったにいないよな」 1人あぶれていた男が、人懐こい笑顔を浮かべて俺の隣に座る。同期入社、仲良くせねばならねえ。 なんとか、引き攣りながらも愛想笑いをつくり、 「あ、ああ。うちのガッコで就職あんまいねえから」 「そ、そうなの?あれ、市内の高校?」 ちょっと驚いた顔をするので、俺は素直に頷いた。 「俺は北高だ。まあ、就職するのも、俺くらいだな」 「へえ、北高とか。すげえなあ、頭いいんだー。俺、東高だからさー。まんま、オバカなんだよな」 一瞬身構えそうになるが人懐こいし、話し方も柔らかくてイイヤツそうだ。 人をガッコで判断しちゃいけないな。 「俺も頭わりぃんだけど、高校受験だけは頑張った」 「へえ、そんでもすげえよ。俺は、栗原道朗。アンタは?」 笑顔でほめてくれるのは、悪い気がしないので笑い返す。 「ああ、ヨロシク。栗原。俺は、長谷川東流」 栗原は一瞬大きく目を開いて俺をガン見する。 「え、ええと。…………あれ?もしかしてだけど、北高のハセガワ?」 確かに東高とは因縁の仲で、かなり喧嘩沙汰を繰り返してたから、東高にいってたなら名前しられてたかな。 それかやり合ったか。でも、顔を覚えてないようだし。 「…………あーもしかして、知らずに殴っちまったこととかある?」 「いやいやいや、ないよ。俺は真壁派だから、絶対かかわるなっていわれてたし。まあ、ウチの士龍からお世話になったって聞いてるよ」 栗原はにこりと笑いながら、首を横にふる。 「なんだシロの仲間かー」 「ハセガワ=銀髪のイメージだったから。流石に入社式だしね。黒髪だと落ち着いてみえるね」 話も弾んでというか、栗原はかなりおしゃべりがうまく、かなりのコミュ力の持ち主のようで、なんとなく暇つぶしに士龍の話とかをして、入社式が始まる待ち時間を過ごした。

ともだちにシェアしよう!