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※夏休みの始まり→sideT

つけっ放しのTVからは、雑音のようにAV女優の派手でわざとらしい喘ぎ声が響いている。 その声に合わせるかのように、俺の唇から漏れるのは熱い濡れた呼吸と喘ぎ。 内臓を圧迫するような肉塊の動きに揺さぶられて、普段はしないような情けなく助けを請う俺を、俺はどこか客観的に見ている。 「――ッァ、、、ッく……ッは、ヤメ…………ろッ、て、ッヤス……ッ、ッ、何……ッのつもり……くッ……ッ」 客観的じゃない。あまりの衝撃に自分のことだと考えられないくらい俺は頭が麻痺していたのだ。 殴りつけ気絶させた俺を、全裸で腕をビニールロープで拘束して、無言で欲望を抜き差しするオスに俺は必死になって助けを請う。 こんなチャチなビニールテープなら、いつもならば軽く力を入れるだけで引きちぎれるはずなのに、おかしいことに全く力が入らない。 身体もダルくて、まるで自分のものじゃねぇみたいにずっしりと重い。 目の前にいるのは、幼いころからガキ大将だった自分に、常についてきた唯一無二の親友。 何かするときには、いつだって家族よりなにより一番近い場所、…………隣にいた。 家も近く、親同士も幼馴染みな俺と、康史が仲良くなるのは自然な事だった。 何故こんなことになってしまったのだろう。 何か、俺は、康史を怒らせた、のか。 全く思いつかずに、絶望感だけが渦巻くのを感じながら、俺は目の前の康史の顔を睨みつけた。 「睨んでも、怖くなんかないよ」 康史は、いつものように優しい綺麗な顔に笑みを浮かべて俺に向けた。

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