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1ヶ月だけでも欲しいから→sideY
この日のために準備はしっかりとしてきた。
段取りも組んで、スタンガンも買った。多分、ここで奪わなければ、きっと東流は俺からどんどん離れていく。
オトナになるってことは、そういうことだ。
仕事を始めれば、朝から晩まで始終一緒にいることなんてもうできない。
たとえば恋人だとしても、そんなことは叶わないのだから、ただの友達だったらなおさら余計にだ。
「愛しているんだ……トール」
届くわけのない言葉を、気を失っているトールの耳元で、囁く。
うるさいほど、TVからAVの声が響いて聞こえる。
卑怯だと罵られても、そのままぶっ殺されても構わない。
激情のままに、俺を恨んでくれるのなら、それでも構わない。
媚薬入りのローションで濡らした指を、堅いアナルにそっと塗りこんで隙間をすこしづつ開いていく。
男らしい形のいい眉がきゅっと寄せられ、感じ始めてきているのか、開いた唇から漏れる呼吸が荒くなってくる。
これが、正義だなんて絶対に想わない。
こんなことで俺は東流に、愛を伝えるなんてできるわけはない。
独りよがりで、間違っているのは分かりきっている。
許されるわけなどないことも。
だけど、ずっと、触れたかったんだ。
どうせ、一緒にいられることなんてないのなら、せめてこの一ヶ月だけでも、俺にくれないか。
それがかなうのなら、このまま死んでもかまわないから。
早く、起きて気がついてほしい、だけど、起きてほしくない。
眠っている東流の堅い胸板を撫で回す。
幼い頃から俺をずっと守ってくれた。
どんなに強い相手にも怯まず、俺になにかあれば駆けつけてくれた。
「全部、トールが悪いんだよ」
見捨ててくれればよかったのに。
こんなキモチを抱かずにすんだかもしれないのに。
ゆっくり指を抜き差しして、唇をそっと吸い上げる。
ずっとこうしたかった。
眉をきゅっとよせて、瞼がひくひくと震えてゆっくりと開かれそうになるのを見て俺は唇を外した。
……かなわないなら、俺は、壊すよ。
壊すしかないんだ…………きっと、俺はかなわないことは分かっているから。
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