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あの日の約束 →sideT
「とーる、もうかえっちゃうの。もっとあそぼうよ」
俺の腕を精一杯引っ張って、可愛いまん丸の目に涙を浮かべてひきとめる。
これは、夢の中だ。
ふわふわして、幸せな夢だ。
少し赤茶色の髪の可愛らしい子。
ああ、これは幼稚園のときの康史だ。
女の子に間違われるくらい天使のように可愛い顔。
「もう4じだから、おそくなったらげんこつされる」
親父もオフクロも元ヤンなので、ちょっとでも悪いことをしたり言う事をきかないと俺の頭をガンガン殴った。
子供ながらにちょっとした恐怖心を抱いていたような気もするが、それにも慣れっこにもなっていった。
俺が大概のことに動じなくなったのはこの教育方針のせいだと思う。
「げんこはいたいね。もう、かえらないとだね」
康史は泣き止んで、こころから心配するように俺の顔を覗き込んでくる。
このころからそうだった。
俺を心配して腕をつかんで必死な顔をする。
心配するように見つめるその表情が大好きだ。今もそれは変わらない。
「うん。だからもうかえる。あした、またあそべ」
「おとなになったら、もっといっしょにあそべる?」
大人になってげんこされないようになったら、もっと自由になったら、ずっときっともっとながく一緒に遊べる。
だから、早く開放されたい。一刻も早く大人になろう。
「やす、おとなになったらいちにちじゅう、ずっといっしょにいような」
「やくそくだよ」
一番好きなやつの隣でずっとたのしく遊ぼう。
約束だ。
それは決して違えない約束。
「おー、おとことおとこのやくそくだ」
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