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出会い→sideS

それは、中学生一年の時。 もうすぐGWになる四月末、中学に入学して漸く自分の席にも慣れてきた。 が、殆ど後ろの席のヤツの顔を見たことがない。 俺の名前は野口で、名前の順に後ろのやつは長谷川だ。 長谷川は普通に出席はしているのだが、うつ伏せになったまま顔をあげた姿を見たことがない。 金髪にしようとして色を抜きすぎたのかぱっさぱっさの白っぽい髪の毛。 昼休みの鐘にも気がついていないのか、すっかり寝っぱなしである。 見るからにも態度的にもドのつく不良さんである。 クラスの連中も彼には触れようとしない。 同小ではなかったが、同小にもクラスの友達はいないようである。 「なあ、後ろの長谷川君って授業聞く気ないの?」 自分の席の近くにきたクラスのムードメーカー的な男子の田村に歩み寄り、問いかける。 田村は少し長谷川から離れた位置に移動して、唇の前に人差し指をあててシーと音をたてる。 「あー駄目駄目。トール君は、起きないし。起こすとすごい機嫌悪いからね。みんな起こさないよ」 「暴れるの?」 イキナリ暴れだすようなヤツなら後が面倒だし、無理に手を出さないほうがいいかもしれない。 それなりに俺も自分に自信はあった。 中学での空手の国体にも1年で出場した。 素人相手に喧嘩は禁じられているのでできないけども。 「いや、簡単には暴れないと思うけど……」 「じゃあ、何」 歯切れ悪そうに田村はちらちらと長谷川を見やる。 同小でも怖がられる存在って気になる。 「顔が怖いし、オヤジさんヤクザさんだし」 理由にそれをもってくるかな、田村君。あんまみたことはないけど、通常時でも怖くない顔じゃなかった気はするけども。親がヤクザなのは、こいつには関係ない話だし。 「暴れないなら別にいいけどな」 今度起こしてみようかな。 と、思った瞬間にガラッと教室の扉が開き、長谷川に劣らず身長のすらっと高いイケメンが長谷川の席の背後から長谷川に抱きついて、怖いもの知らずにぐっらぐっらと揺らして起こしにかかっている。 「トールーーー、もー昼だよ!飯食おうぜーメシ、メシ」 学年1美形といわれていて、頭脳明晰、運動神経抜群の男で学年のモテモテ界のトップをいっている男である。 何故、この生ける爆弾扱いの男にこんなに親しげなのだろう。 うーとか、あーとかいいながら、それでも面倒そうに上体を起こして長谷川は顔をあげた。 顔つきは怖いが、それなりに整った男らしい顔である。 イケメン相手にひどく眠そうな顔つきで面倒そうだが言葉を返し、あまつさえ時折微笑みみたいなものも浮かべている。 こいつも、普通に笑うんだな。 それがパッと見た時の感想だった。 「アレは………えっとイケメンの日高君、普通にたたき起こしたぞ」 「あー、日高はさあ、幼馴染だからなー。いっつもつるんで、喧嘩も一緒にしてるって」 そりゃ意外な話である。 あまりに美形で一緒に喧嘩するようなタイプでもなさそうなんだけどな。 イケメン君は、長谷川の分の弁当まで用意しているようで机に並べてかいがいしく世話をやいている。 「へえ、イケメン君は不良なんだね」 にっこにっこしながら、楽しそうに食事をする姿からはまったくそんな様子はみえなかった。 どれがおいしいのか説明しているようで、笑顔には嘘も何も無い。 打算のない好意が伺える。 「イケメンだからね、それなりに恨み買いやすいみたいだよ。いろんな女の子とっかえひっかえだっていうから、喧嘩も売られるみたい」 「そりゃあウラヤマシイな、喧嘩以外は」 どんなに仲良くても、あんな風に一緒に飯食うかな。 「でも、まあ、バックにトール君いるからね。日高に手を出したら3倍返しとからしいから、日高もヤリたい放題らしいよ。トール君も利用されてるだけなのかもね」 「ふうん。本当にそうなのかな」 利用しようとして媚をうっているものではない。 あれは本心からの好意だなと、俺にはわかった。

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