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呆れて口が塞がらない→sideS

フリーズすること、約2分弱。 俺は、康史の下で荒い呼吸をつきながら身体を震わす東流の姿を凝視していた。 「ッ、をい……ッ、……ヤス…………抜け……よ」 3人の中でいち早く正気に戻ったのか東流が腕を伸ばして、康史を投げ飛ばすように引き剥がすと、軽く深呼吸をしていつもと変わらない表情で俺に視線を向けた。 「悪ィな、セージ。ちっとヤスとセックスしてた。ちょっくらシャワー浴びてくっから、そこ座って待ってて?」 まるでゲームしてたってくらいの何気ない口調でさらっと言って、くいっとソファーを指差す。 「あ、……ああ……わかっ、た」 頷くと、東流はバリバリと自分の髪を掻き乱してベッドから降りると、スルッと俺の横を抜けて浴室へと入っていった。 俺はまだぼんやりしながら、東流が指差したソファーに腰を下ろすと、すぐ横に置いてある冷蔵庫から勝手にコーラを取り出しキャップをあけた。 「……誠士、俺から説明する。」 康史は東流が出て行った扉を見やると盛大にため息をついて、タオルで簡単に体を拭いてからスエットの下を履き部屋のソファーに座り直した。 「オマエら、モテるのに、ホントどーしたんだ?この暑さで脳みそ沸騰しちゃった?」 コーラを飲みながら、俺はからかうように康史に視線を送る。異常に仲が良くて、中学の時から東流に弁当を作ってもってくるような康史だし、抜いてやってるうちに興奮したとか、そんなオチなのかもしれない。 「俺は……ずっとトールに片思いしてた」 ボソリとつぶやいた康史に俺はむせそうになってコーラの蓋をしめた。 「え……。康史……マジなの。二人のお遊びとかじゃねえのか、今のは」 晴天の霹靂いや、でも、どこかで……そうなのかもしれないとは考えたこともあった。 それを覆してきたのは、派手な康史の女遊びだったけど。 どうやら康史のほうはマジらしい。 と、すると女遊びはカムフラージュか。 アーモンド色の綺麗な髪に、アイドル張りに整った顔でモデルのように適度に筋肉のついた体躯で、本当に康史は女にモテるやつなのだ。 わざわざ男を選ぶ必要などないはずなのに。 しかも、東流は男の俺でも憧れるような、全身から強さが溢れ出るような男だ。色を抜きまくって色素がほとんどない髪で、吊り上がった目は豹のようでいつでも目の前の相手を威嚇しているような男だ。 逆ならありかもしれないが、抱きたいと片思いする男とは到底思い難い。 「もう俺ら高3だし、思いを遂げるならこの夏しかねえと思って、先週トールを俺は強姦した」 康史の告白に、俺は自分の耳を疑った。 強姦……とか、それは犯罪だろ。 つか、その前に東流は地元じゃ知らないやつがいないくらい腕が達つ。 「勿論、ガチでいったら殴られて終わりだから、不意打ちで殴ってスタンガンで体の動きを封じて気絶させた。トールはスタンガン使われたって気づいてねえっぽいけど…………」 「ちょ、待って。マジで強姦したのか、アイツを」 強姦した関係にしては、東流に怒りの感情などは見えなかった。 さっきの様子から言って、セックスしてたことにも特に罪悪感も嫌悪感もなにもなさそうだった。 「俺の計画だと、強姦して夏休み中ずっと監禁して調教しようと思ってたんだ」 頬を掻きながら、うすら怖いばかりの犯罪計画を話し出す親友に、俺は背筋が凍った。 「康史、マジ、こええんだけども。東流、だぞ。間違ったら殺されるぞ」 「実際、殺されてもいいかなって思ってたんだ。思いを遂げられるなら、後で殺されてもいいかなって」 本音なのだろう。 そこまでの片思いを親友が、もうひとりの親友にしてるだなんて、中学から一緒にいるのにちっとも気がつかなかった。 気づいてはいた、のかもしれないが、見ないふりしてたかもしれない。 「俺のモノになってくれンなら、俺を全部やってもかまわねえなってさ」 男に恋愛感情をもったことがないからわからないが、康史の本気はなんとなく分かった。 「……東流は?強姦されて怒ってねえの?」 「よくわかんねえけど、怒んなかったな。泣かれたケド…………好きだからヤったって言ったら、なんか許してくれた」 泣かれたって……あの東流が泣くのか。 感情すら筋肉でできていると思っていた。 信じられないようなことばかり聞かされ、思考回路が停止しそうだ。 「そん……で、付き合うことになって、それからずっと部屋に閉じこもって毎日セックスしてたわけだ。悪いな、報告しないで」 「猿かよ、てめーらは…………」 いや、報告されてもなあ、どう反応したらいいのかマジで困るけど。 どうしていいかなんて、いまだってとまどっているし。 強姦された相手を許して、付き合うって東流の思考回路は、相変わらず意味がわからないし、まったくわかりたくもない。 まあ、東流も少なからず康史を好きだったってことなのだろう。 そりゃ、昔から、東流が康史を滅茶苦茶大事にしてたのは、充分知ってる。 それなら、これは祝福すべきだな。 康史からは、いいよる女の子を紹介してもらえば、なにより俺もハッピーになれるってもんだし。 ん、こころから祝福しよう。

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