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襲撃→sideT

「…………何人だと思う?」 隣を歩く康史に、俺は囁くような小さい声で尋ねた。 だいたい20人くらいだと思うが、こういうことは康史の方が勘がはたらく。 遊園地にいこうと家を出て5分で、背後から尾行してくる男の気配と、周りを囲もうと狙っている輩の気配は全身にぴしぴしと感じられる。 「25人くらいかな…………今日は随分と多いね」 いつもなら軽くノせる人数だが、ギシギシ痛む体の調子はよくない。 相手をしていたら結構な時間かかってしまいそうだ。こんなことだったら無理してもバイクでいったほうがよかったかもしれない。 こんな時に限って、わらわらと暇なにーちゃんたちが絡んでくるんだよなあ。 「逃げんべ。ヤス、駅で待ち合わせだ」 「珍しい。トールの口から逃げるって聞くのは初めてかも」 ちょっと驚いたようなだけど、どこか心配そうに窺う顔に、俺は軽く息をついて 「本調子じゃねえからよ。いつもは軽くのせるけど、全員相手にしてたら日が暮れちまう」 太陽が少しづつ高めにあがってきて、体力を奪おうとするように照らし始める。 こんなクソ暑い中じゃ、片付けるにも体力が無尽蔵に続くようなわけにはいかない。 「でも、バラバラで行動するのは逆によくねえよ」 「んー、逃げる時の機動力はソロのがイイはずだ。先いくぞ」 康史が不安がってるのか俺の腕を掴んでくるのを、そっと軽くいなして俺はバッシュを蹴って走り出した。 機を見たかのようにわらわらと俺を集団が現れ、バタバタ音をたてて俺をおいかけてくる。 立ちふさがってくる男を、右腕でアッパー食らわせ左足で蹴り込みながらなぎ倒し、路地へと入り込み追ってくる男達を待ち伏せ腕を振るって次々と昏倒させる。 キリがない。康史もうまくやってるには違いないが、少し心配だな。 「ハセガワァ、最近めっきりオトナシイって聞いたけど、逃げちゃうくらい平和主義になったの?今日は随分可愛いカッコしてるけど」 こいつがボスなのか、中ボスなのかそんなとこだろう。金髪の装飾ジャラジャラつけたいかにも不良ですと主張している男が俺の目の前に立ちふさがる。 どこの誰だったかな。 どっかのチームのヤツだったのかは覚えてんだけど、名前までは記憶ない。 「テメーらのつまんねえ遊びに付き合ってる暇ねえっての、ワカンナイ?」 相手の拳を左腕で受け止め、拳を繰り出し相手の腹に埋め込むと、グエッと男は変な声を出してのけぞる。 この程度の腕で俺を襲おうなんて、100年早いぜ。 振り切っで逃げようと脚をかけて蹴り倒そうとするが、胸ぐらを掴まれ引き寄せられる。 「……ハセガワァ……さすがにてめえの拳はクるなァ、でも、これからの時代は喧嘩も脳みそ使ってするもんだぜ」 懐に入ってきた男は、俺の鼻先にタオルのようなモノをくしゃりと押し付けた。 やべえ…息……ッ、すっちまった。 焦って身体を蹴り払うが、くらくらと空気がゆらいだ。 なん、だ。 これは。 ヤバイという警鐘がガンガンと俺の頭の中になり続けていた。

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