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傷痕 →sideT
確かに、1度好きだと思った相手を、明日から友達に戻るなんてことは酷く辛い選択だ。
だけど。顔を合わせなければ、そんなに無理せずに忘れられるはず。
生まれてすぐに出会って、今日まで隣にい続けた存在だとしても、きっと月日がたてば忘れるのはできるはずだ。
今だって、康史を抱きしめただけで体は発熱して欲情しまくっている。
俺自身が浅ましすぎて、たまらなくなる。
俺は泣き出しそうになっちまいそうで顔を腕で覆い、吐き出すように告げる。
「………………わかってくれ」
これ以上一緒にいたら、俺は俺自身を消し去りたくなってしまう。
「全然、わっかんねーよ!!トールが気にしてる体の傷は、俺を守るために作った傷だろ。俺への愛の痕だろ?汚くなんかあるわけねーだろ」
髪に触れて優しく頭を撫でられると、なんだかほだされそうに心が揺らぐ。
顔を覆う手の甲に康史の唇を充てられ、チュッチュとすいあげてくるる。
康史の言葉に、一瞬体をこわばらせ首を力なく左右に振る。
それでも、絆されたくは、なかった。
俺の気持ちをわかってほしいと思っていた。
「逃げるなよ。どんな傷痕ついてても、俺はトールを離さないからさ」
ぐいと無理やり手の平を顔からどけさせられ、康史の真摯な顔に泣きそうになり顔をゆがめて、無理やりはりつけた笑みを浮かべるので精一杯だ。
「てめえは、そんな…………っ、クソくせえ台詞、どっから編み出してくんだよ?」
「トールを愛してるから、自然に出てくるんだって。俺の愛は疑うんじゃねえよ」
疑う?
そういうのじゃない。
疑ったことはないし、そういうのじゃねえ。
「………………疑ってはいない。だけど、俺がが…………俺を許せねえ」
「俺はトールじゃないとダメだ。それがダメならまた、捕まえて閉じ込める。…………嫌なら、俺を殺してよ…………簡単だろ?……オマエだったら……さ。俺は、オマエに殺されても構わない覚悟をつけてるくらいには愛してんだからな」
康史の真剣な眼差しに、俺は二の句が告げずに、反撃することすらできなくなる。
「ホント…………ヤス、オマエ、頭がおかしいだろ」
康史の背中へと腕を回すと、ぐっと相手を抱き寄せ唇を奪ってやる。
絆されないと決めたのに、完敗だ。俺に康史が殺せるわけがない。
なにより、大切なヤツだ。傷つけるくらいなら、俺が死んだ方がいい。
仕方がないな。
俺も、腹をくくるしかない。
どんなに、醜い姿でも、構わないというのなら。
死ぬほど恥ずかしくても、つらくても……オマエがそれを望むなら。叶えてやらないわけにはいかない。
「…………スキだぜ……ヤス……」
万感の思いを含めて俺は告げた。
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