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砂浜と太陽 →sideT
海の家で海パンを履いたが、ニップルピアスがあるのでちょっと緩めのランニングだけ上に着ている。
つか、別に隠さなくてもいい気はするんだが、康史いわくドMの証だから隠しなさいとのことだった。
そんな意味知ってたら、ぜってえつけ直しとかせずに、外したんだけどな。
まだ、きっちり定着したわけではないから、下半身しか海に入るなよと、さらに釘をさされて少し不満である。気持ちよく泳ぎたかった。
康史の海パンは、シンプルなグレイに赤いラインが入った膝上まであるタイプのオシャレなやつだ。
俺はもちろん短いシマウマ柄にした。
窮屈な車から出たこともあって、俺は、超開放的になって早足で砂浜に出る。
「スッゲー嬉しそうな顔。そんなに楽しみにしてたんだな」
「ったりめーだろ。夏休みくるのが、メチャクチャ楽しみだったんだぜ」
康史と長く過ごせる最後の夏休みだ。
社会人になったら、こんなには一緒にいれない。
だから、夏に入ったらとことん遊びまくろうと思ってた。
今になっちゃ、康史が何故夏休みに入ってすぐに、俺に無体を働いた焦りとかそういうのが、なんとなく理由が分かるようになってきた。
ちゃんと言えば良かったのにとは思うが、そりゃまあ結果論だってのもわかる。
「東流、ビーチバレーしようか。2対2でチームわけて」
「……誠士。そりゃ、無謀だろ?」
康史は、少し考え込んで、ミカちゃんという女の子をみる。
「誠士とミカちゃん対俺らはどっちか1人だな」
康史は少し悩んだ振りをしながら決めている。
俺はソレを傍目にして、ボールに空気を一気に吹き込む。
2対2なんかにしたら、チーム替えとかしなくちゃならないからだろう。
こーいうことら策士の康史に任せておけば間違えない。
「すっごい!長谷川君!一気に膨らます人初めてみた!」
そんなにすごくはないが褒めてくれる。
俺は調子に乗ってボールの他のものも膨らましはじめた。
意外におもしれぇ。
「東流、全部膨らますとかさばるしもちずれー」
誠士が文句を言っているが、気にしないことにする。
ビーチバレーかぁ。
やったことねーけど、ボールを叩きこめばいーんだよな。
大体球技はそんなもんだ。
俺は、ボールと浮き輪とボートを手にして、康史に空いていそうな場所を指さした。
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