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ドライブ →sideS

いきなり東流から電話があったと思ったら、海にいくから来いとのこと。 まあ、それにかこつけて、こないだ仲良くなったミカちゃんをていよく誘えたのはラッキーだったけど。 軽自動車に、でかめの男3人と女子1人はさすがに窮屈だ。 東流は助手席に座り、いつになくご機嫌そうである。 康史も大分怪我も治ったらしく、運転くらいなら大丈夫そうだ。 「……日高君って運転とかするんだねー。もう免許あるんだー」 ミカちゃんは、俺の隣に座りながら意外そうな口調でいう。 「ほとんど、バイクで移動するほうが多いから、車はあんまり乗らないかも。18才の誕生日にすぐに取ったよ」 康史も機嫌は悪くはないようで、運転しながら適度に返事をしている。 「ユリカたちも誘いたかったけど、確かにこの車じゃ乗れないもんね」 こないだの合コンで一緒にきた子達も言われたが、康史の車が小さいのを理由に断った。 こいつらのことだから、こないだの夏祭りの時のように、女の子増やしても2人でラナウエイしやがるにちがいない。 「急に誘ってごめんね。トールが海にいきたいっていいだしたからさ」 康史はニコッと伝家の宝刀の笑顔を見せる。 だいたいこれで女の子はイチコロなんだよな。 俺は、羨ましい気持ちでいっぱいになる。 「いつも3人仲良しだよね。学校でも3人でいるとこ良くみるよ。目立つし」 確かに悪目立ちはしているような気もしなくない。 よく、部活の奴らには俺がこの2人と親友だというのを不思議がられている。 「………まあ………でけえからな……」 ボソっと呟く東流の目立つ理由は、かなり間違った方向の認識である。 ミカちゃんも、一瞬びっくりしたような表情を浮かべ、面白しろがるような目で東流を見る。 「ちがうよぉー、カッコいいからだよ!日高くんも長谷川くんも。長谷川くんは、美人の金森波砂さんの元カレなんでしょ。相当のメンクイなんじゃない?」 東流は中学から春くらいまで、すっごい美人の康史の親戚と付き合っていた。高校で一緒になったが、学年で1、2番の人気のある子である。 「…………そうだな。俺ァ、メンクイだな」 東流は、ミカちゃんの言葉に、そのまま素直に肯定する。 普通は顔よりココロとか、まったく思っていなくてもいうだろう。 康史は、思わずといったようにぷっと吹き出す。 ミカちゃんは横で目をまるくしている。 「長谷川君って、正直者なんだね」 「…………ナズと付き合ったのも、すごく顔が好みだった」 ていうか、金森さんの顔は、康史の親戚だけあって康史にそっくりである。男女差は確かにあるのだけど、こないだの康史の女装はまるっきり金森さんだった。 双子と言われても納得しそうなレベルである。 ミカちゃんは何と返していいのか困ったように笑うと、 「でも、あんまりそういうこと女の子にいったら、フラれちゃうからね」 と、優しくアドバイスをしてあげていた。とってもいい子なので、本当にうまくいきたい。 まあ、恋人の康史は、それでも満足なんだろうけどな。 顔が好きだと言われても、きっと嬉しいんだろうと、運転する康史を見ながら俺はそう思った。

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