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新学期 →sideY

「うーん、学校かァ、夏休み、あっちゅうまだったよなァ」 盛大な欠伸をしつつ、鞄を派手に振り回しながら東流は、隣にいる俺の顔を見やってかったるそうに歩いている。 今日からは新学期である。 制服のシャツをいつもは全開にしている東流は、今日はしっかり上までボタンを留めている。 結構、首筋ぎりぎりまでキスマークを残したしな。服装がだらしなくなくできなくなるのも一石二鳥である。 「まあな、俺もケガして動けなかったし、花火大会と海に行けたのがラッキーだったくらい」 東流の隣、一歩後ろくらいのペースを保ちながら俺は合わせて歩く。 そこが、俺のいつもの定位置だ。 「俺の体力も無限じゃねェんだよ」 「いや、どうだろ?……無限に近いって」 いつもはバイクなのだが、駅から学校までの道のりをリハビリをかねて歩く。 肩を揺らして2人で笑いながら歩いてると、 「はよう。お二人さん、こないだはありがとな。すげえ楽しかったあ」 誠士が後ろからバタバタと駆け寄ってきて、割り込むように声をかけてくる。 どうやら、誠士も俺のリハビリに付き合ってくれるらしい。 「お、セージ、ハヨォ。その後、ミカちゃんとはうまくいってんの?」 誠士のことをさぐるように、東流は興味津々の表情で聞き出そうとする。 まあ、親友もリア充にはしてやりたいんだろうけど。 「まあな、付き合うってとこまではいってないけど。今週はデートの約束あるんだ」 うれしそうな笑顔全開の誠士に、にやっと東流はつられたように笑う。 あの時撮ったデーターを元にあのチームの男達に脅しをかけ、ついでに警察沙汰にならないように骨を折ってくれたのは、すべて誠士のお陰だった。 自分が一番困るから動いたというのもあったのだろうが、東流は誠士にすごく恩を感じていたので、リア充にくらいはなって欲しくてしょうがなかったのだ。 「そりゃあ、何より」 ぽんっと肩をたたいて、東流はがんばれーと声をかける。 「オマエらも部屋でセックスばっかしてんじゃねえよ。ほんとにサルかよ」 「人間のご先祖はサルだしなァ」 「そこで人類の進化論はいらないダーウィンだよ」 「ダウィーン?新しいギャグか?」 東流が首をひねっているのに、誠士は返す言葉をうしなっている。 「とにかくだ、デートでも外いけよ」 「しばらく2人だけのデートはトラウマだから、俺たち」 からからと笑いつつ誠士に返答して、東流を見やると、東流は思案するように少し空を見上げている。 からっと晴れた夏の終わり。 雲ひとつない青空 「でも天気イイからなー。もったいねェから、週末どっか外いくか、ヤス」 「どこいくの?まあ、公園で青姦もイイヨね」 提案に願望をくわえて返す俺に、東流は肘でエルボーを食らわせてきま。 イッテェ……けど、加減はしてんだろうな。 「あおか……っ、ヤス、マジそりゃ変態過ぎンだろ」 呆れたような口調だが、首筋を赤く紅潮させる東流の様子に、まんざらでもないんだろうなと思う。 「なんだよ、期待している?」 耳元で囁くとゴクリと喉が鳴る。 こりゃ、夏休みかけて徹底的に調教した甲斐があるな。かなり反応しているようだ。 「だーかーらー、てめえら、セックスばっかしてんじゃねえってのっ!この、サルどもが!」 けらけらと笑う俺らの間に、誠士のツッコミだけが響き渡っていた。

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