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厄介なDNA →sideY

「立ち聞きなんてイケメンのすることじゃないんじゃないの、ヤッちゃん」 屋上の扉前で外を覗き込んでいた俺に、先に戻ってきた波砂は少し怒ったような表情で、俺の肩をパンと叩く。 波砂は俺の母の妹で、俺の叔母である。 分かりやすくサザエさんでいえば、俺がタラちゃんで波砂がワカメちゃんだ。 それが波砂は恥ずかしいのか、絶対黙ってるようにと俺に言うが、顔のパーツは大きさ以外そっくりである。 まあ、こんだけ似ているし親戚とはいってはいるのだけど。 「大丈夫、今さら返せとかいわないわ。……トオル、あんたに襲われたのがきっかけとか言ってたけど。そんな卑怯なことしたの?」 半信半疑な顔で聞いてくる。 「……したよ。トールを殴ってスタンガンで気絶させて、縛って無理矢理犯したよ。既成事実でもなきゃ、腹くくれねーよ」 俺の言葉に一瞬目を見開いたが、はーっと深々とため息をつかれる。 「ヤッちゃん、アンタ…………ホントに最低ね。あんたもトオルのこと言えないくらい鈍感だよね、トオルはずっとヤッちゃんのこと好きだったよ。付き合ってた時も、よく言ってたよ。ナズはヤスに似てるから安心するって」 少し悔しそうに言う波砂の言葉に自分も同じような気持ちだったことを思い出す。 自分に似た波砂と付き合うなら、まだ仕方が無いかなとか思ったり、波砂と結婚したらトールは俺の叔父さんになるのかとか思ったこともあった。 「本当に好きな相手には、いつまでたっても自信とかないもんだ。どうせ叶わないならと思って俺は思いを遂げた。まさか許してくれるとは思わなかったけど」 「そうね。なんだかんだトオルはヤッちゃんに甘いからな。ヒドイ噂流されてるわよ。トオルのこと大事にしてるなら、ちゃんとどうにかしてよね。根回しはしてあげるけど。あんまり酷いことばかりしてたら、またわたしが奪い返すからね」 冗談ぽい口調で憎まれ口を言って、ぽんぽんっと階段を降りていく波砂の背中を見て肩をすくめる。 素直じゃないのは遺伝かもしれないな。 なんだかんだ、波砂はトールを今でも好きなのだ。 女の子たちを丸め込む方法なら、いろいろ知っている。 牽制するのもいいかと思ったけど、波砂のいうとおりだな。 俺は、重い鉄の扉をあけて、フェンスにもたれてだるそうにタバコを吸っている東流に向かって歩き始めた。

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