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不機嫌の理由 →sideT

曇っていた天気も少しづつ青い空の断片を見せ始める。 教室に戻ろうとは思ったものの、始業の鐘が鳴ってるのを聞きながら、俺はなんとなくイラついて二本目のタバコに火をつけていた。 噂とかはハッキリ言って、そんなことはどうでもいいと思う。 他人が俺をどう思っていようと、そんなこと気にしたことは今までにない。 俺は俺だし、俺の中のルールがそれで変わることはない。 波砂がそれでどう思っても、俺には今更もう関係ない話だ。 元カレが男と付き合ってるって言われて、波砂もいい気はしないだろうけど。 そこは、わりいけど波砂に我慢してもらうしかねえな。 付き合ってるのに、付き合ってないって弁解するのもおかしいし、そんなのは俺は嫌だ。 「トール、眉間に皺寄ってるぞ。考え事なんか似合わないんだけど」 気がつくと、康史は俺の目の前に立って俺の眉間を指先で撫でてくる。 まったくもって、康史の近づく気配に気がつかなかった。 そんだけ気持ちがとられていたのかもしれない。 思わずグイッとその腕を掴んで、康史の顔を睨みおろす。 「ヤス、コニシ振るのに、どうして俺の名前出したンだァ?」 康史は驚いたようにちょっと眉をあげて、俺に対して珍しく面倒そうな表情をありありと見せた。 普段はしない表情なので、俺がそんな細かいことを気にする性格ではないから、質問の内容に驚いているのだろう。 「……ああ……わりィ。”好きな子できた”で、納得してくれなくてね。到底敵わない相手だって教えてあげたんだけどね。……女子に討伐されちゃったらどうしようとか、らしくねえこと考えてたのか」 どう逆立ちしても考え付かない理由を、冗談交じりにため息をつきながら逆に質問してくる康史に、俺は掴んでいた腕を軽くひねりあげた。 大体こいつが、無駄に顔がいいのが悪いのだと思う。だから俺がコイツを好きだというのはこの際は置いておく。 こいつがイケメンでなくとも、俺が強姦したといううわさはたったかもしれないが、討伐隊とかは結成されないに違いない。 「ンなの……別にどーでもいいんだけどな。ウワサじゃ、俺、強姦魔らしいぞ」 ぼそっとつまらないというように答えを返すと、康史は真意をはかるかのように俺の顔をじっと覗き込む。 人にどう思われるかなんて、俺には大したことではないけれど、卑怯なことしていると思われることが気に食わないのは確かなのである。 だったら、コイツと相思相愛と自分でバラしたい。 一方的だと思われるのは、なんとなく勘弁だ。 「逆なのにな。それで不機嫌な顔してるわけか」 「ちげーよ。ンなのどーでもいい。逆でもなんでも俺は、俺は、オマエと無理矢理付き合わせているとは思われたくない」 康史は軽く眉をあげてちょっと笑いながら、俺が掴んだ腕と反対の手で、俺のシャツの上から乳首をゴリゴリと指先でこね始め、俺は再度くわえていたタバコを落とした。 「って……っ、ナニ、こんなとこでドコ触ってるんだ」 噛み付くように康史を怒鳴りつけると、意地の悪い表情を浮かべて、手の動きは止めずに言葉を返す。 「俺は強姦魔だからね、学校でヤったことないなあって思ったらさ、ついつい」 指の動きが円を掻く様にして大胆になり、腰からびりびりっと疼くような熱が這い上がってくる。 下半身もきつくなり立っていることも厳しくなって、俺は空いている手で支えるようにフェンスの網目を掴む。 まさか、こんなトコでヤられるわけにはいかない。 静止の言葉を吐いて、腕を握っていた手を外して悪戯をする腕の方にを引き剥がそうと力を篭める。 「フザケンなよッ……ちょ…っ……待て……」 「だあめ。こんな誰もいないとこで、波砂と二人っきりになったお仕置きしなくっちゃね」 満面の笑顔で言った康史にぶるりと震え、俺は逃げ道を探すように視線をさまよわせた。

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