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※屋上 →sideT

お仕置きなんていわれるようなこと、されるようなことをしたつもりは、断じてしていない。 ただ元カノと話をするだけで、一々お仕置きとかなにやらされてあたら、たまったもんじゃねえ。 大体、自分は俺の百倍はオンナと話をしている癖に、なにをいいだすんだ。 頭の中は康史に対して非難轟々なのに、体は与えられる刺激を素直に受け入れてしまっていて、まったくぴくりとも動けない。 「ヤス、をい……こんなトコで…………ヤったら、マジで怒ンぞ」 せめてもの抵抗とばかりに康史の顔を睨みおろすが、ニッコリとイイ笑顔で微笑む康史には、まったく抵抗が功をなしていないのがわかる。 悔しさに腕を握る握力になんとか力を篭めるが、いつものようには力が入らない。 体が康史の手の動きに慣れ切ってしまっているようで、既に下半身が反応を返してしまう気恥ずかしさに、俺は俯いて声を漏らさないように奥歯をギリギリと強く噛み締める。 「トール、いま、恥ずかしがってるの、すげえそそる」 膚まで赤くなる俺の体を検分するように眺めて、カチカチとベルトを片手で外す。 「マジで………怒……ンぞ…をい、………バカヤロ……」 「ははっ、なんだよ、げきおこぷんぷんまるぅーとか、言っちゃう?」 からかうようなふざけた言葉に、更に俺の怒りは煽られるが、ジッパーを下ろされはだけたパンツの隙間から、ゆっくりと指先で既に膨らみ始めた分身を嬲られると、それだけでたまらず俺はフェンスを握り締める。 ゆっくりとした指の刺激に、息があがる。 頭の中がぼっーっとして、それ以上何も考えられなくなってしまう。 「なあ、好きな人のことを好きだということって、悪いことなのかな。俺は世界中の人に俺の好きな人は、トールだって胸張って言えるよ」 反吐が出るくらい甘い言葉を耳元でささやかれ、霞む視界の中で見るヤスの表情は、幾分寂しそうに見える。 俺だって、同じだ。 「…………ッちげーッて、俺がいってんのは…………そこじゃねッ」 隠すってことは、康史中では本当に嫌なことだったのだろう。俺だって、隠したり嘘をつくようなことは、断じてしたくはない。 だから、告白してきた女に告げたのはわかる。 それは分かるんだけど。 「俺ァ…………おれだけが…………ッておもわれたく、…………ねェ……」 合点がいくと同時に、脚の隙間からずるっと康史の指が胎内へと挿し込まれるのを感じる。 熱がぐずぐずと溜まっていき、腰から上に甘い疼きが這い上がってくる息苦しさに俺はフェンスに頭を押し付けて息を深く吸い込む。 「……ァハァ…うう……っ、ごめ……っん………あやまっか、ら、ここじゃ、ヤダ………」 「ダメ、謝っても許してあげないよ」 意地悪い表情を浮かべた康史に、俺はグッと体に力を込めて首を横に振るしかなかった。

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