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失策 →sideY

「わりィ、コニシがぶっちゃけたから、俺もぶっちゃけちまった」 あんまり悪びれた様子もなく、東流は眠たそうな顔で委員会から帰ってきた俺に報告した。 教室が妙な空気でざわついているのはそのせいかと納得する。 小西に煽られて、俺と東流が付き合ってることをクラス全員にカムアウトしたらしい。 「俺はその方が嬉しいって言ったし、トールは悪くないよ」 静かな教室に響く声で、俺は東流にそう返す。 狙うやつはまさかいないとは思うのだけど、牽制はした方がいい。 それに、小西さんみたいな女子が増えても面倒だから、ウワサ話でも広まればいいなと思う。 「ずっと、俺がトールに片思いしてたわけだし、叶って嬉しいんだからね」 東流に言いながらも、みんなに聞こえるようにわざと言う。 これなら、東流が無理矢理ってウワサもなくなるはずだ。 「…………おう。オマエが迷惑じゃねーなら、俺は……それでいい」 やはり恥ずかしくなったのか、眠たい振りをして机に突っ伏した東流は可愛いくて仕方がない。 流石に昨日はヤリすぎたし、体力ないのかもしれないな。 「日高、小西さんには気をつけた方がいいかもしれない」 東流と俺の席の間を占拠する東山が俺に声をかける。 クラスメートに聞いたところ、東山が小西さんに手をださないように東流をホールドしてくれていたらしい。 まあ、東流はホールドなんかされなくても、オンナには手はあげないだろうけど。 「そうだね。今回のことは、俺が小西さんに話しちゃったからだからね。騒がせちゃって、ごめんな」 「日高のせいでもないだろ。ちょっと驚いたけど」 「そうだよな。俺も10年越しの片思いだったし。トールが、波砂と別れたからね、チャンスかなって」 サッカー部のキャプテンをしていた東山は、男女共に人望がある男である。 味方にしておいて、損はないな。 「意外に一途な奴なんだな。女の子とっかえ引っ変えって聞いていたけど」 東山はころりと騙され?てくれる。 「まあ、俺も叶わない恋でやさぐれてたんで。東山も、トールを押さえてくれてありがとう。女の子に手はあげないけど、小西さんも煽ったらしいし、もしものことがあったら大変だし」 「いや、長谷川も暴力振るう動きはしなかったし。俺は何もしてないよ。ただ…………ウワサで聞いたんだけど、小西さんの家って…………ヤクザと関係してるらしくて。長谷川なら大丈夫だと思うんだけど…………」 「わかった気を付けるようにするよ。東山、ありがとう」 失策だったな。 プライドが高そうな女だったから、叶わない現実を突きつけたはずだったが、裏目にでた。 「それにしても、日高くらいのイケメンなら、女の子選び放題なのに…………もったいないよな」 そういや、東流も同じようなことを言っていたな。 そんなの目じゃないんだけどな。 「俺の中で、トールは初恋の人でいつでも俺の白馬の王子様だったんだ」 東山は一瞬表情をかたまらせて、今は机の上の眠りの森の姫をマジマジと見下ろす。 「そのセリフ、日高以外が言ったら失笑この上ないけど、そんなはセリフも似合っちまう、日高が王子に見えるけどな」 東山の言っていることはよくわからなかったが、まあ、俺にとっちゃ、そういうことだった

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