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抑制と均衡→sideT
「なあ、本当に二人ってセックスとかしてるのか」
いつものように机に半分突っ伏してうとうと半寝していると、俺の頭上で康史と東山が不穏な話をしているのが聞こえる。
昼休みからよくもそんな話よくできるなあと、半分目を開けて、ちょっと髪の隙間から眺めるようにみあげる。
「ああ、してるよ、なあ、トール」
さらっと康史はなんでもないようなことのように、答えて俺に振ってくる。
大体、小西にバラされ、俺は教室で屋上セックスしましたと白状したはずなんだけど。今更な話をなぜすんだよ。
つか、何で俺に振るんだと顔を起こして康史を睨み上げると、へらっとした表情にぶつかり、俺のみみたぶを指先で揉むように刺激してくる。
あからさまなセクハラ攻撃だ。
小西のアウティングのせいでクラス中に俺らの関係はバレてしまった。
前よりクラスの連中は俺に声をかけるようになってきたし、康史はクラスの連中の目も気にせず、俺にセクハラを堂々とするようになった。
まあセクハラをするのは構わないのだが、その後ヤスは予備校にいくので、一人で悶々とする日々を送るはめになる。
結局、つらい目に合うのは俺なのである。
なんだか損な役回りだ
「なあって……オマエなあ……もう、一ヶ月もヤッてねえよ」
ぼやきまじりに、ため息を吐き出す。
というか、ため息が最近減らない。カラダはもっと欲しいのに、セクハラしかされない。
こんな感じでセクハラ三昧であるのに、もう随分セックスはご無沙汰である。
康史はずっと抑えていた衝動を抑えなくていいという開放感に浮かれているようだ。
俺も気づかないくらいに、ずっと抑えていた感情なのだから当然だろう。
「長谷川が突っ込まれるの想像つかない」
東山がじいっと俺を見てくるので、思わずギリっと睨み返してしまう。
「ンなもん、想像しなくていいからよ……」
辟易しつつ、体を机につっぷしたまま顔だけをあげる。
そら、俺だって長年同級生に恐れられていた男ではある。
プライドとかどうでもいいが、他の奴らに想像されるのは少し遠慮したい。
「見てみたい?」
軽い調子で康史が言うのに、俺は眉をぐっとよせ不機嫌に康史の腕を引っ張る。
「ヤス………あんまふざけんな。ぶっ殺すぞ」
「照れちゃって」
……照れるとかそういう問題ではない。
なんていうか、康史のはじけっぷりを誰か止めてやってほしい。
俺が止めるべきなんだろうが……。
「ホテル代おごってくれたら見せてあげてもいいぜ」
「オマエ……アホだろ……?俺は嫌だぞ」
勝手に決めようとする康史に、俺は拒絶の姿勢を見せる。
つか、何が悲しくてクラスメイトにセックス公開せねばいかんのだ。
つか、公開とかマジで笑えない。
「トールだってしたくてたまんねえって顔してるくせに、見せたぐらいじゃ減らないし」
そういう問題じゃねえんだけどな。
見せもんじゃないだろ。ソレ。
したくてたまらないのは、本当だが、本気で嫌な表情をしているのに、分かってるんかね。
「減るって……俺のココロがすり減る」
「家に戻る時間はないけど、休憩時間くらいならとれるから。バイトもしてないからホテル代もないし」
俺の言葉も全く聞く気はないみたいだ。
まあ、俺もしたいってのは同じだが、そこに第三者がいるのは嫌だと思う。
そういうの分からないもんなのだろうか?
いたって普通の感覚だと思うが。オトコ同士は違うのだろうか。
まあ……そりゃあんなことがあって、今さらっちゃあ今さらだけどな。
そういうのはイイコトねえってのは色々失敗して知っているはずなのに。
なんだかんだヤスも懲りることは知らないんだろう。
「ホテル代くらいおごるよ、見せてくれるの?」
東山の言葉に、康史は何故か驚いた表情を浮かべた。
康史が東山を煽ったくせにである。東山がいらねーというとタカをくくってたに違いない。
人をからかうのが元々好きな奴ではある。
「なあ…………東山、なんでそんなノリノリなの?」
「興味本位だよ。男同士とか、ゲイビなんてなかなかみれないじゃない」
悪びれない言葉に嘘はなさそうである。
「…………なあ、ヤス。俺は嫌だ」
起き上がって東山の顔を見やり、不機嫌に顔をゆがめた。
「じゃあ、外でヤる?」
康史はじっと見つめ、俺の顔を確かめるようにじっと見つめて、誘うように手を握って指をからめる。
ヤりたくて仕方がないのは、康史も俺も一緒なのだろう。
「外はヤダ。…………わかった」
俺は、腹を括った。
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