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弟→sideT
実家に帰って部屋に入ると、西覇は机にかじりつくように勉強をしている。
表情は、まだやっぱり暗い。
「タダイマ」
「また、出戻り?」
不機嫌に言葉を返されて、俺はすぐさまちげーよと首を振る。
「なあ、セーハ。そんなに、イラついてるならさ、白黒ハッキリつけたらどうだ?」
ウダウダしている様子に、見ているこっちもイラついてしまい思わず口を出してしまう。
言ったところで、簡単に悩みは晴れないとは思うが。
「…………簡単に言うなよ。アニキはいつも何も考えてねーだろ。…………先輩の家にも行った。父親の方の実家にいったらしい。四国とかいってた。そんな遠くにいけるわけない」
断定的にすっぱり話を終わらせる西覇に、俺は問い返す。
「住所は聞いたのか?」
やっぱりタダでは帰ってはこないな。
「あ……ああ」
「だったら、会いにいけばいいだろ。結局さ、白黒つけんのが怖いだけだろ?オマエは」
西覇は、シャーペンをグッと握りしめて机をガンッとはたたく。
「どうやって、四国に行けっていうんだよ!!…………簡単に言うな」
「別に、アフリカとかアマゾンの奥地じゃねーべ。いけない距離じゃねーよ。年が明けたら俺がバイクで連れてってやる」
俺は、西覇の肩に軽く手を置く。
多分、あのカレシもいい加減なキモチで付き合ったわけでもないだろうし、簡単に置いていったわけでもないだろう。
あんなに必死に俺に助けを求めたアイツの顔は真剣だった。…………悔しがってもいた。
「アニキ…………アリガト」
「だからよ。俺も留年したくないんで、悪いんだが、勉強を教えてくれ」
西覇に、ここぞとばかりに交換条件をもちかける。
「ちょ、留年って…………。それ、留年したら間違えなくかーちゃんに吊るされるぜ。分かった。卒業確定したら、四国に連れてってくれ…………このままじゃ、ほんとにオレ、前にすすめない……」
「おう。ウダウダしてんな、男だろ?」
「じゃあ。正月はアニキは勉強だな。勉強の間は、ヤッちゃんのとこに帰るなよ」
いや、それは無理だろと返して、とりあえず冬期講習ばりに教えてくれると、西覇は約束してくれた。
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