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初詣→sideY

誠士は、両手にイカヤキとたこヤキを持って神社へと向かう砂利道をざくざくと大股で豪快に歩いている。 最初は誠士から電話きたときには、今年は初詣も面倒くさいなと思っていたが、やっぱりこうやって毎年一緒に新年を祝うっていうのも悪くないなと思う。 東流は、俺のちょっと先をダルそうにぶらぶらと歩きながら、露店の中を目で物色している。 欲しいものがあるのかなとか、東流のことが気になって仕方ないのはもう半ば癖になっている。 「康史も食う?」 目の前にぬっとたこ焼きを出されて頷くと、俺は誠二のたこ焼きに楊枝を刺して口に運ぶ。 「さんきゅ」 「ったく、朝から盛っててよく体力もつよなあ。にしても、電話で俺にきかせんのは趣味悪いけど」 イカを齧りながら横目で恨めしそうに誠士は恨めしそうに俺を見やる。 「電話に出れる状態じゃないんだって、あんだけ無視したのにコールやめねえのが悪い」 肩をすくませて、露店の焼きそばを大盛りで買っている東流を待ちながら誠士のたこ焼きをもうひとつつまむ。 「そうだけどよ……。つーか、東流のアレ、エロイ声だよな。焦ったぜ」 「腰にクルだろ?もちろん、あげねぇけどさ」 イカを食べている誠士の脛を軽く蹴りながら、にやっと笑ってみせる。 電話口で焦っている様子は凄くわかっていたから、何考えたかは知りたかったところだ。 「いらねえよ。だって東流だぞ。だから、俺にはそーいう趣味ねえっての」 「何?喧嘩してンのか」 やきそばをりすのように頬張って、もぐもぐしながら東流は首をかしげて、俺を見下ろす。 喧嘩してないけど、東流の姿が本当にやたら可愛い。 大きな熊が捕食しているようだ。 「ケンカじゃないぞ、ちょっとじゃれてただけだからな」 東流の肩をたたいて、ヤキソバの上に誠士のたこ焼きを勝手に乗せてやる。 別に電話で声を聴かれたとか言っても、東流は恥ずかしがったりもしないだろうし、怒りもしないだろう。 それがわかっているので、特にここで言い合いの内容を言う必要はない。 「ふうん。あんま目立つと、東高のやつらきちゃうから気ぃつけろよ」 俺と誠士は思わず顔を見合わせる。 オマエに言われたくはない……が、俺と誠士の本音である。 いい合いをしなくても、充分東流がいるだけで目立ってはいるのだが、本人はそれにはまったく気がついていないのであろう。 銀色に輝くつんつんの髪と、しっかりした大きな体つきはそこにいるだけで目をひくものだ。 「今朝は、それほど体力消耗してねえの?」 「ん?」 「朝からセックスしてきたんだろ」 俺らの間に遠慮なんてないんだろうけども、誠士の言葉は本当にズバズバ率直に問いかける。 率直くらいじゃないと、東流に話は通じないんだろうけども。 東流は、うーんと唸ってやきそばを掻きこみごっくんと呑み込んでから、誠士の顔を見返す。 「消耗してねェように見えるか?」 「どうなンだ?」 問いかけに問いかけで返されてトールは自分の体を軽く叩いてみせる。 「抜かず5回かなァ。最近、ちっとそれくらいなら、体慣れてきたみてェなンだよねェ」 にっと口端っこをあげて笑って自慢げに胸を張る。 ……それ、自慢するとこなのか? 俺も誠士も思わず顔を互いに顔を見返していた。 「脳みそは沸騰しちまってよく覚えてねえんだけどさァ。ま、キモチイイからいいんじゃね」 からっとあっけらかんと言われてしまい、思わず俺はあっけにとられていた。 恐るべき順応性だろうか……。 最中の淫らに蕩けた表情を思い返すと、それもそうかと思い当たる。 あれは、完全に意識がすっとんでる様子だった。 それでも、キモチいいといってくれるのは、最高に嬉しい気がする。 っと、初詣だしそこは煩悩をよそにおいておいたほうがいいような気がする。 「慣れるものなんだな……、まったく想像できねえけど」 「まあなァ、最初は体の中バットでぶん殴られたくらい痛くてしょうがなかったけど、そのうち慣れる」 「まあ、ある意味バットだもんな」 感心したように頷いている誠士に、なんとなく怒りすら沸きあがってくる。 こいつ面白がっているな。 そんなこんなで、ガチャガチャ言いながら社へとたどり着いたので、一礼三拝のに習ってお参りをする。 横目で東流眺めると、きっちりと参っているようだ。 こーいう儀式的なことはしっかりしているなあと思いながら、俺は願った。 これから、ずっと東流と一緒にいられますように、と。 合格祈願の事はすっかり頭の中からすり抜けていた。

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