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大阪事変→sideT
康史には、悪いけどトラブルは俺が動こうが動くまいが降り掛かってくるものみたいだ。
髪も黒く染めたし、夜の街にも出なかったってのにこのザマだ。
バイクを埠頭から少し離れた公園に停めて隠し、フェリー代とガソリン代もサドルの中にしまいこみ、それ以外の金をもって、ゆっくりと倉庫にちかづく。
逃げる時にあんまり追手が多いのは勘弁して欲しいな。
俺は見張りの男の背後から近寄り、頭を強く殴りつける。
見張りにいるのは向こう側に、あと3人か。
裏から回って、次々に頭を殴って落としていくと、ゆっくり倉庫の扉を開く。
中には、柄の悪いいかにもチンピラといった風情の男達が10人ほど立っていて、西覇は全裸にされて口にはタオルを押し込められ、首筋にナイフを突きつけられている。
あまりにもヤバイ雰囲気で、空気が止まる。
「お兄さん、金はもってきたんかい。この子がうちのモンに、ぶつかって挨拶もせえへんで、逆に殴り掛かるようなことをしたんでねえ。慰謝料はろてもらおう思いまして」
西覇にぶつかったのは、多分わざとだろう。
頭はいいほうだから、こちらからぶつかって殴るなんてするはずがない。
逃げようとして仕方なく応戦したにすぎないだろう。
「旅行中なんで、かき集めてもこれが全財産だ。弟を返してくれ」
俺は財布を取り出し、奴らに手渡す。
10人くらいならどうにかなるが、西覇が人質にとられている。
奪う方法は、ないか。
どうすりゃいい。
財布を覗いている男が近寄ってくる。
「お兄さん、これ本気なのか?今どき5万で慰謝料とか」
「旅行中なんで、これが全部だ」
俺は近寄って来た男の腕に足蹴りをくらわせて、人質にとろうと腕をひねりあげる。
「あと、こいつを返す、でどうだ?」
「ハッ、威勢がええのう。お兄さん、ソイツを殺せへんやろ。そないに弱い下っ端なんぞいらんわ。金だせへんのやったら、この子の体で稼がせるしかあらへんな」
腕に握った下っ端は、彼らにはまったく無価値のようだ。
ヘタを打ったかもしれない。
俺はグイッと男の腕をねじりあげて、バキバキと骨を折る。
「ひぎゃーーッあああああ」
「悪いが、それ以上には金はない。これで全部だ。弟は無事に返してくれ。そんなに、体で払え言うなら、俺が払う」
「オマエみたいなイカツイのは、需要ないんでな」
俺は、そうだだよなとつぶやき、ゆっくりと西覇の方へちかづいていき、襲いかかってくる男たちを、脚を振り上げて床に沈めていく。
「凄腕ってやつやな。弟をバラされてもええんか?」
「バラしたら、売り物にならねーだろ」
何人か俺にナイフを向けてきているのが、直感的にわかる。
「…………そんなら、オマエの身体ではろてもらおうか。なんぼ綺麗でなくとも、どエロいビデオでも撮れば、元がとれるやろしな」
好色そうな男は俺を指差して、西覇の拘束を外していく。
「そっちの方を抵抗しないように、剥いてから縛っておけや」
「弟には、ぜってえ手ェ出すなよ」
俺は両腕をあげると、一気に押し寄せる男たちが体を押さえつけるのを抵抗せずになすがままになった。
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