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太陽のような→sideY

俺は時々夢を見てるってわかる時がある。 あー、これは夢なんだなって、夢の中で気づく。 「ヤスー、ヤス、今日帰りにサッカーしよって」 授業が終わった後ですぐに、ぴょこっと一回り大きい身長の東流が僕の机に腰をおろして、真っ直ぐな目で見下ろしてくる。 あー、懐かしい。これは、10年くらい前の東流の顔だ。 平均よりすごい高い身長で、誰も身長は東流にはかなわなかった。 高学年の5年生より高かったりする。 「だれと?」 東流にはあまり言っていないのだが、俺はこの時イジメにあっていた。 だから、他の子達と遊ぶのを嫌がっていた。 男オンナとか、オカマとか本当にくだらないことばかりを言ってくる。 東流は多分俺がイジメられていることに気づいていない。やつらも、東流がいない時を狙って意地悪をいってくる。 周りをみなくても、まったく問題なくわたっていけるヤツなのだ。 それが、本当にうらやましい。 「オマエもこい」 結局、東流は俺の問いかけを全スルーしてくれる。 そして、太陽のような真っ直ぐな笑顔を向けて、机から降りると強く手を引いた。 「でも……僕がいっても………いいのかな」 きっと仲間はずれにされるだけだ。 いってもいいことなんかないと、こころのどこかで警鐘が鳴る。 傷つくのはいやだった。 悔しい思いもしたくない。 「ヤスいれねえってなら、俺もやらねえから」 にっと笑う東流に腕を引かれるまま、ランドセルを背負って僕はグラウンドへと連れて行かれた。 案の定、クラスの派手な連中が俺を見るなり難色をしめした。 分かっていた。 どうせ、仲間はずれだ。 「ヤスシ、女の子みたいだからな。サッカーできるの?」 意地悪い言葉に僕はむっとして、奥歯を噛んだ。 こなきゃよかった。 「あァ?何か文句あんのか」 東流は不機嫌になって、周りからもわかる怒りのオーラを撒き散らす。 こういう時のトールは、本気で怖い。 俺の顔を馬鹿にした3年生を殴り倒したこともある。 「べ、べつにないよ、ないよ。」 慌てたように同級生たちは首を振って、俺の顔を馬鹿にしたふうに見下ろすと、ちっと舌打ちをする。 「ヤスシ、足引っ張るなよ」 「うん」 どっちかっていえば、運動は得意だ。 サッカーも結構好きで、東流と二人でボールをとりあったりして遊んでいる。 器用じゃない東流は俺の動きに、いつもついてこれなくなり、負けがこむと不機嫌になってやめたやめたと、別の遊びをすることが多い。 「すげえな、ヤスシ。サッカーうまいんだな」 「だろ?アイツ運動神経いいんだぞ」 何故か自慢気な東流の声が聞こえてくる。 俺にとって、俺を認めてくれる唯一の存在。 「顔に似合わずだな」 同級生が、まだ俺をバカにしている声が聞こえる。 「俺、ヤスの顔すきだしね。どの女子よりかーいいじゃん」 「そうだけど。ヤスシ男だし」 「そんなの、かんけーないじゃん。かーいいのは、かーいいだろ」 どこか自慢そうな東流の表情に、心臓はどくんと音をたてた。 俺のコンプレックスをこともなげに好きだと言った、東流がまぶしく感じた。 思いっきりゴールに向けてシュートを放つ。 女みたいだといわれるこの顔を認めてくれる、唯一の人。 どくんどくんと心臓の音だけが、大きく響いていく。 「ヤスシ!すげーーー、ナイスシュート!!!」 馬鹿にしていたクラスメイトが、俺に駆け寄ってくる。 イジメていた連中も、僕を賞賛する言葉をくれる。 でも、そんなことより……東流の言葉だけが耳に残って離れなかった。 懐かしい。 泣きそうになるくらいの大切な記憶の夢。 太陽のような、ひとの……夢。

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