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激情と抑制→sideT

鵜野小の正門にこいといわれたが、俺は目的の廃屋を見つけた。 前に一度壊したが、また直っている締められたままの扉へと、加速したバイクごとそのまま突っ込んだ。 扉を破って、中にいた男達を一気にバイクで跳ね飛ばしながら、積んであった角材を掴んで立っている奴らの股間をそれでぶんなぐる。 視線を巡らすと、倉庫の隅の台で下半身丸出しの男達を見つけて、ウイリー走行して台の上に乗り上げ、多分アタマだろう長髪の男の髪を引っつかんでバイクで引きずりまわす。 「ひぎゃああああああ」 擦過傷だらけになったそいつを床に転がして、手にしていた角材でがこがことぶん殴る。 「テメェら、ヤスに何したんだ、コラァ!!!」 さらけだしまくっているちんこを、角材で派手に殴りつけて、近くで身構えている男たちを次々に角材を振り下ろしてぶちのめす。 康史を探して視線をさまよわせ、後ろ手に縛られ脚も開いたまま固定されている姿を発見してバイクで近寄る。 遠目からも、暴行を受けたことは明らかだ。 どうやら意識はないようだが、無残な痕が残されていて、顔にも殴られた痕が残っている。 バイクから一旦降りて、康史を縛っているロープを外して自由にすると、着ていたスカジャンを脱いで着せ、脱ぎちらかされた転がっている長髪のパンツを脱がせて履かせる。 ドサッと自分の背中に背負って落ちないように、解いたロープで固定して角材を持ち直してバイクへ跨る。 「よーし、全員、地獄イキ決定な」 悲鳴をあげて逃げ惑うやつらを追いかけて、角材でべきべきと殴り倒していく。 ボス猿も完膚なきまでにやっつけたが、まだ俺の気はすまねえけども、それよりなにより康史の体のが心配だな。 人殺しにもなる気は、ねえしな。 俺は、奴らをそのままに、バイクを急発進させて廃屋から元来た逃走する。 派手に扉を壊したしスピード違反で逃げたし、通報されてるかもしれねえ。 さっきまで、のんきに寝てた自分が本当にうらめしい。 時間を戻せるなら、その時の俺を殴り起こしたい気分でいっぱいだ。 壁に突っ込んだときにヘルメットも割れてしまって、頭から血がだらだら垂れていたが、痛覚なんかまったく脳みそには伝わってこなかった。 それよりも微動だにしない康史の様子に俺は恐怖している。 曲がりくねって道を遠廻りして、追跡を逃れるように走行方向を一巡する。 漸くついたはマンションの駐輪場で、康史の体をロープを外して姫抱きに変えて心臓に耳をあてる。 とくんとくんと規則正しく打つ鼓動に、やっと安堵する。 いきてる……。 よかった……。 部屋の鍵をあけて、酷い状態になっている康史の体を浴室にそっとおろす。 洗ってやんねえと……。 いつも、俺のことを康史が洗ってくれているように、起こさないように優しく洗おう。 綺麗にさえしてやれば、ちょっとは安心するかもしれないから。 俺は、丁寧に康史の体を洗って、ベッドへと寝かせた。 康史さえ起きれば、またいつもどおりの日常に戻れると俺は信じていた。

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