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キオクのカケラ→sideY
東流は、俺が落ち着くまでずっと胸の中に抱きしめてくれていた。
もっと野獣みたいな感じかもしれないとか考えていたが、信じられないくらい優しい抱き方に、もう何が何だかわからなくなってきた。
それに、あいつらにやられてもまったく感じなかったのに、東流にされたら俺の脳みそすっとぶくらいっていうのは、本当に愛とは絶大だなと思った。
!!
あいつら……って、誰だ。
だれだ…………。
まざまざとよみがえってきた記憶の小さな奔流に、俺は頭をかかえた。
全部じゃない。
その、場面だけ。
「どうした?」
俺の体を抱きながら、心配そうな表情で問いかける東流を俺は信じられないように見返した。
何故、許しているんだ。
俺は、東流を良く知っている。
だから、東流は絶対に俺を許さないと思って、それが怖くて……。
それが怖くて、俺は逃げ出したんだっていうのに。
逃げたのだ、まだ付き合っていなければ、絶望せずにすむなんて浅はかな考えで。
「…………お、もい…………だし、た」
おずおずと呟きをのぼせると、東流は僅かに目を見開いて表情を固めたが、しばらくの合間黙って俺の体をぎゅっと抱きしめてくる。
「…………ンだよ……。もっかい……忘れろよ」
「思い出したら……オマエは俺を許さないし……捨てるだろ」
「…………はなさねえよ、バカ言うな」
東流の声は真摯で、そしてその腕はあったかい。
手離す気なら、俺が記憶を消したのをイイコトに離れてしまえばいいだけの話だ。
それをしなかったのは、東流が本気で俺を離したくないと思っているからだ。
それは分かっている。
「俺が許せねえのは、俺自身だ。だから…………オマエは気にすんじゃねえよ」
「…………俺を抱いたのはトールだろ?だから、大丈夫だ」
だから、俺は記憶を改竄する。
東流は俺の言葉に僅かに目を開いて、ぐっと俺の体を抱くと首筋に唇をあてて頷く。
「オマエに、触れられるのは俺だけだ」
俺らは都合のいい記憶だけを、拾い集めて縫合する。
真実だけが、いつも正しいわけじゃないから。
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