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第33話 販売終了のお知らせ。 7

ロングTシャツと可愛らしい絆創膏のお陰でどうやら『男女のカップルがイケナイコトしてた』と都合よく解釈してもらえたらしい。 フィッティングルームから笑われながらも叶を引っ張って出て来てシャンプーを探そうと薬局を回った。 数店舗回って何処にもない、夕方に成ったらそのときに、 「……杉原先輩、もう探しても有りませんよ」 らしくなく叶が物に根を上げた。 いつも俺に色んな驚くような物を見付けてくれる叶が根を上げた。 「叶と祖母ちゃんの思い出なんデショ?……諦めてほしくないよ」 「諦めるのではなく変えるんです」 叶は笑っていた。 嫌な笑顔でも作り笑いでもなかった。 「先輩の好きな香りのシャンプーに変えます」 「……え?」 叶は俺の手を握りしめて可愛く笑った。 「お祖母ちゃんの思い出は思い出にして、今『大好き』な杉原先輩に私のシャンプーを選んでもらうことにします」 叶は本当に諦めた様子ではないようで、ホントに俺に選ばせるようだった。 「先輩、言ってくれましたよね?『無くならないものもきっとある』って。私『無くならないもの』気が付いてしまいました!!」 無くならないもの……か。 「この短時間で叶は何を見付けたの?」 「はい、杉原先輩が気付かせてくれたんですよ」 「言った俺は検討も付かないんだけど……」 すると叶は俺を握る手を胸に当てて 「人の『おもう心』です!!」 「………」 「『思う』『想う』の『心』ですよ」 俺はいつも通りに苦笑いしか出来なかった。 『無くならないものもきっとある』なんて言ったのは俺なのに、気付いたのは叶なんてさ……カッコ悪いな。 「……ホントに無くならないね」 「変わってしまうかもしれませんが、無くなりませんよね?」 「叶への『愛してる』俺の気持ちは変わらないけどね」 あぁ、また俺は負けたー!! やっぱし叶には勝てる気がしないんだよね、この『純粋な心』なは敵わないよ。 「杉原先輩、選んでください!!」 「んーんーんー、…これは?」 俺なりに一生懸命選んだシャンプーは『ハチミツ』のシャンプーだ。 「リンゴには『蜜』があるのもあるし、叶もペニスの先っちょから甘い『蜜』を垂らすからピーッタリ!!」 「なっ……あれは体液ですっ!!」 「選んだよ?使ってね!」 「…先輩に選んで貰うなんて、私の考えは軽率でした……」 叶はシャンプーとにらめっこしながら手にしていた。 「そうだよ。……馬鹿な叶」 イチバン馬鹿ななのは、自分で慰めで言った言葉に自分で気付かない俺だよね? こうして『販売終了の終了のお知らせ』から逃れた叶と俺だった。 GW明けてから叶の髪の匂いが『リンゴ』から『蜜』に変わった。 完

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