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第1話
「ここが新しい学校か……」
親の海外への転勤を理由に前通っていた学校をほぼ強制的に自主退学させられ、全寮制のこの学校に転校を命じられた。
前の学校で特段仲の良い友達や彼女がいた訳でもないから別にいいが、引越しの作業が死ぬほどめんどくさかった。あれはもう2度とやりたくない。
しかし、別にいいとは言え俺は一通り家事はできるし、生活能力はあるはずだ。なのになぜ寮に入れられるのはよく分からない。
人と関わるのがめんどくさいのに誰かしらと一緒の部屋になるとか……。
いや、考えるのはやめよう。学校に行きたくなくなる。
まあ、でももう帰るとこなんてどこにも無いから行くしかないのだけれど。
学校はなかなか広くて、職員室を探すのにだいぶ手間取った。
「失礼します。新学期からこちらに転校することになった佐田光哉 ですけど……」
名乗ると、一人の教師が手を挙げて俺のことを呼ぶ。
「あー、佐田くんね。こっちこっち。」
その人の元へと足を進めた。
その教師はまだ20代前半に見える若い先生で、体の線が細く、夏だというのに長袖のシャツを着てマスクをしていた。
「俺は担任の鈴木圭吾 です。
担当強化は数学。
でも、体が弱いからたまに休むけどよろしくね。」
「今も悪そうですね……」
「うん。今日も熱があるよ。」
なんてヘラヘラ笑いながら言うこの先生は本当に大丈夫なのか。
「そうそう、荷物だけど俺も手伝うから今日中に片付けようか!
佐田くんの相部屋の子も俺のクラスなんだけど、そいつ今日は部活の遠征でいないから。」
鈴木先生は俺を寮へと連れていく。
手伝ってくれるのは有難いが大丈夫か……?
というか、俺はクラスメイトと同じ部屋なのか。さすがに居づらい空間で教室も寮の部屋も過ごすことになるのは避けたい。コミュ障と言われる類の人間ではないから普通にコミュニケーションはとれるが、正直めんどくさい。
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