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第1話
飼っていたウサギが死んだ。
夜遅く会社から帰ってくると、ゲージの中でウサギが倒れていた。ピクリともしないウサギをゲージから取り出すと、ふさふさの毛並みが指をくすぐり心地よい感覚を覚えたが、その奥にある肉は、冷たく凍えていた。
悲しくはなかった。
なぜなら、好きで飼っていたわけじゃないから。
上司が飼っていたウサギが子どもを産み、貰い手がなくて押し付けられたウサギだった。真っ白で赤い目を持つ子ウサギ。
ウサギどころか、犬猫さえ飼ったことがなかったから、動物の飼い方なんて何一つ知らなかった。ネットでとりあえず必要なものを調べて道具や餌を買い、あとは放っておいた。
考えてみれば、俺がしっかりとウサギを触ったのは、これが二回目だった。
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