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第4話

 俺は、部屋に入るとシャワーを浴びようと脱衣所に入った。ワイシャツを脱ぎ捨てる。ふと鏡に映った自分の姿が見えた。体中に散らばっていた傷痣は、もう消えていた。愛された跡ではなく、殴り蹴られた跡だ。 胸や腹を撫でる。そこにあったはずのモノを探すように、自然と指が流れていく。  残っていたはずの痕は、すべて消えていた。 新しく生み出された細胞が、証を跡形もなく塗りつぶしてしまったからだ。  ぐっと皮膚に爪を立ててみる。もしもこのまま皮膚を破れば、その下に傷跡は残っているだろうか。フッと一つ苦笑した。 残っていたところで、既にそれは自分の望んだモノではない。 望んでいるのは、消えてしまった過去なんかではなく、未来だからだ。過去は寂しさを埋めてはくれない。己にその深さを思い知らせるだけだ。 脱衣所から出ると、空のゲージが目に入った。 ウサギはもういない。 寂しくて死ねるなら、俺はとっくに死んでいる。 寂しさで死んだウサギが、俺は羨ましくてたまらなかった。 END

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