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残り火2nd stage 第5章:気づいた想い
「アキさん、早く帰って来ないかな」
「何だよ竜馬、俺とそんなに仕事したくないワケ?」
「いやいや。いつも一緒に仕事していたアキさんがいないと、調子が狂うっていうか違和感ありまくりでさ」
夜のコンビニの店内のそこかしこに、アキさんと過ごした面影があった。
あのときはくだらない話を喋ったなとか、ありえないミスをしたのにカラカラ笑って許してくれたり。
夏休みでいなくなってからというもの、優しいアキさんの顔ばかり思い浮かべていた。
「アプリでメッセ送っても、既読されるのはいつも夜だし、返事だってなかなか返ってこないし」
遠方にいる友達の所でのバイトが、とても忙しいのかもしれないけど、アプリでの素っ気ない態度は、いつものアキさんらしくないって感じなんだ。
「竜馬だけじゃないよ。俺の出したメッセの返事は、決まって夜が多いわ」
「ゆっきーもか。良かった、俺、何かしでかしたせいで避けられてるのかもって、深読みしちゃった」
「あのさ竜馬、変なことを聞くけど、千秋と何かあった?」
レジの前に立つ俺に、棚の整頓をしながら訊ねてきたゆっきー。
「別に何もないけどさ。日本語って相手の解釈次第で、色々とれる場合があるでしょ」
「まぁね。たまに、面倒くさいことになったりするよね」
「誤解されたかなとか、もしかしてキズつけてしまったんじゃないかと心配しちゃって」
「心配、だけなの?」
少しだけ間を置いた質問に、首を傾げるしかない。
「それって、どういう意味?」
「いや……。なんていうか竜馬が千秋に、執着しているなと思ってさ」
「ぷっ! それってゆっきー、ヤキモチ妬いてるとか?」
「ちがっ! 絶対にそんなんじゃないって!」
ゆっきーが声を荒げた瞬間、整頓してる棚から箱物がひとつだけ落ちてきた。寸前のところでそれをキャッチするのが、しっかり者の彼らしい。
「危なかった……よいしょっと。たださ、友達間での恋愛のいざこざが、俺としては嫌だなって思っただけ」
「やっ、恋愛なんて何、言ってんだよ。アキさんは男なのに」
「お前、気づいてないだろうけど、何かにつけて千秋の名前を連呼しているよ」
猜疑心を含んだ眼差しで、少しだけ離れたところからゆっきーが俺を見た。その視線はまるで自分の心を見透かすような感じに見えたせいで、思わずまぶたを伏せてしまった。
「そ、それはその……いつも傍にいたアキさんがいなくて寂しくて、つい……」
つい口にしただけと言うつもりだったのに、言葉が空を切ってしまい、続けることができない。人に言われてはじめて、自分がアキさんを特別に想っている事実に気がつくなんて。
何やってんだろ、俺――。
「……でも、ね。千秋は止めた方がいいと思う。恋人、いるんじゃないかな」
「知ってるよ。赤い車に乗ってる、凄みのあるイケメンでしょ?」
「なんだ、知ってたんだ」
そりゃあ、さ。アキさんがソイツを見る目が、明らかに違うから。それだけじゃなく車に乗り込んでキスしてるところを、偶然見てしまった。
嬉しそうに車に乗ったかと思ったら引き寄せられる様に顔を寄せてキスしてるのを見て、驚くよりも綺麗だなって思わず見惚れてしまったのはナイショだ。
「だけどソイツずっと、ここに来ていないじゃないか。しかもソイツが来なくなってからアキさん、すっげぇ元気がなかったし。きっと酷い別れ方をしたんじゃないのかな」
「確かに、そうだけど」
「バイト増やして頑張ってるのも、ソイツを思い出さないように頑張っているのかもなって」
時々、やるせなさそうな表情を浮かべて遠くを見つめるアキさんに、友達として何て声をかけていいか分からなかった。友達として――だが恋人としてなら、どうなるだろうか?
アキさんの心に大きく開いてしまっている傷口を塞いでやるべく、恋人として接してあげたら、きっと……。
「俺、アキさんがこっちに帰ってきたら、思いきって告白しようと思う」
「ゲッ……。告ちゃうんだ、竜馬」
ギョッとした顔して、イヤそうな表情を浮かべたゆっきーには、すっげぇ悪いんだけど。
「うん。アキさんの寂しげな顔、俺は見たくないんだ。前のような笑顔が見たいから」
だからアキさん、帰ってきたらこの気持ちを受け止めてください――俺の隣で、いつも笑っていて欲しいから。
大好きな人がいなかった夏休みは、長くてつまらないものだった。それはまるで永遠のように感じられたけど、その代わりにアキさんを大事に想う気持ちが分かったから、良しとしなきゃいけないな。
世界中の誰よりも、アキさんが好きです。
【2nd stage 了】
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*・°.*・゚
あー、さてさて。こんな感じで、2nd stageが終了しました。
「ああ、お友達がいきなり恋人宣言するのか。安定すぎるな」
と思うでしょうが、そこを安定させないのが尚史流(・∀・)
レビューでキャラも話も王道ですねと書かれてしまった以降の作品は、かなぁり突飛なラストを迎えてます。尚史の作品を読み漁ってる読者の方ならご存知だと思うのですが、いきなり主人公を殺しちゃったり殺人鬼にしたりと、結構血なまぐさいコトをやらかしてます。
まぁ元々、ヤンデレが得意ですからねフフフ♪(*ФωФσ)σ
なので竜馬くんをヤンデレにはしませんが、王道を蹴散らした内容にしようと考えておりますので、最後までお付き合いしていただけたら幸いです。
尚、竜馬くん目線でのお話は【残り火短編集】の(蒼い炎)に掲載していたり、その後の恋のお話を【残火―ZANKA―】や【しあわせのかたち】で細々と書いておりますので、よろしければどうぞ!
他にも関連作品として、穂高がホストをしていたメンズキャバクラを舞台にしたお話【エゴイストな男の扱い方―レモネード色の恋―】がございます。店長の大倉さんとレインくんの不器用な恋模様をお楽しみくださいね。
長くて拙いお話をここまでお読みくださり、本当にありがとうございました。
引き続き、【残り火Final stage】をお楽しみください。
瀬木 尚史@相沢 蒼依
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