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残り火本編第一章 火種13
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「もうすっかり元気そうだね、本当によかったよ」
その日の夜、いつも通り煙草を買いに来た第一声。
「お陰さまで……、これお釣りです」
「ん……」
手を握られる前に、さっとお釣りを手早く手のひらに置いた。触れられたら困る、絶対に――
「じゃあ、待っているから」
「……もう諦めて帰ってくださいっ! 昨日だって、ちゃんと寝ていないだろうし、疲れてるでしょう。それに俺は――」
口元に柔らかい笑みを浮かべ、出て行こうとした背中に、思いきって大きな声をかけてみた。他にお客さんがいないのが、助かったというべきだろう。
「疲れは、君に逢えた瞬間に消え失せてしまったよ。だから待ってる」
俺に、全部を言わせない感じで返答されたせいで、言葉が空を切る。困り果てる顔を一瞥してから、颯爽と出て行った。
「迷惑の二文字も、言わせてくれないのか」
寄せられる想いが強すぎて、迫られて優しくされて。強引に近づいたと思ったら、逃げるように身を翻すなんて。
「どうしていいか、ホントに分からないんだ」
恋愛経験の浅い俺には、彼の対処について、本当に困り果ててしまう――
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