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第2話
「…どうした?」
腕を切り落とした男は、その音にようやく異変を感じた。微笑みを向ける頬にそっと優しく両手を添える。
そして、あまりにも軽すぎるその顔に男はハッとした。
「……なんだ、体が…。ああ…落ちちゃったのか…」
微笑んだその顔は、すでに胴体から離れていた。部屋の中を見れば、胴体の近くにあった電気のヒモが赤くなっていた。ピアノ線で長く補強したものだった。腕を切られ、体勢が整えなくなった時に、たまたまピアノ線が首に巻きついてしまったらしい。
男は軽くなってしまった恋人を見つめる。男へ向けられた優しい微笑みを受け止める。
そっと男は、まだ温もりの残る柔らかな唇へ唇を重ねた。
そして、唇を離すと、とても満足そうな笑みを恋人に向け、つぶやいた。
「愛してるよ」
END
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