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第9話

「エンデさんって、何歳なんですか?」 「……ふふ、何歳だと思う?」 「ええと……最初見た時は三十歳くらいかな……と」 「だろうね。でも私は、少なくともその倍は生きてる。正確な年齢は忘れたけど」 「えっ……!? それってもしかして、不老不死ってやつ……」 「うーん……少し違うかな。生憎この呪いはもうちょっと複雑でね」 「呪い……ですか?」 「私は二十九歳の時に呪いにかかってね、見た目の成長が止まってしまったんだ。おまけに怪我をしてもすぐに傷が塞がって元の身体に戻ってしまう。当たり前の傷では死ぬこともできなくなってしまったんだ。もちろん、寿命が来れば死ぬけれど」  なるほど、そういうことだったのか。あの治り方は、何か普通ではない秘密があると思っていたから「呪いだ」と聞かされても、思ったほど衝撃は受けなかった。  むしろエンデの厭世的な空気や己を省みない行動に、一定の理解を得られた気がした。 「……まあ、若気の至りだね。自分の力を過信して、よからぬ方向に魔法を使ったバチが当たったんだ。自業自得だよ」 「エンデさん……」  エンデは壁にかかった鍋を取り、野菜等の食材を集め始めた。料理でもするつもりなのだろうか。そう言えば、昼間から何も食べていなかった。 「あの、何かお手伝いしましょうか?」 「うん。じゃあ、ちょっとそこの水瓶から水を持ってきてくれるかい?」 「はい」  言われた通り、ゼクスは大きめの柄杓に水を汲んでエンデに持って行った。  エンデは慣れた手つきで野菜を切り、鍋に投入して暖炉で軽く炒めていた。 「ありがとう」  柄杓を受け取り、鍋の中に水を入れる。そしてそれを掻き混ぜながら煮詰め、塩・コショウで味付けした。シンプルなスープだ。  それを皿に盛りつけ、パンを添えてテーブルに置いてくれた。 「どうぞ。材料がないから、あまりたいしたものは作れなかったけど」 「……ありがとうございます」  ゼクスは誘われるままテーブルについて、スプーンを握った。そして何の気なしに一口スープを飲んだ途端、目が丸くなった。 「……!」

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