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終焉の地 〜 the Place of his Death

射干玉( ぬばたま)の闇に包まれ、俺はただ一人朽ちたまま横たわっていた。 痛みに遠退いていたはずの意識が、うっすらと覚醒していく。息を吸おうとするのにうまくいかない。けれど呼吸が苦しいわけではない。 そうか、俺は死ぬのだな。 本能でそう気づいていた。思うように動かぬ身体は岩のように重い。何かを思い出そうとするのに頭の中に靄が掛かっているかのように不鮮明で記憶のひとつも浮かばなかった。 この感覚を、俺はどこかで憶えている。永劫回帰という言葉が頭に浮かんだ。 ── 珠利(シュリ)。 遥かから声が聞こえる。低く慈しみ深い響きに、灯火の消えかけた意識を集中させる。 珠利──それが、俺の名なのだろうか。 その気配は彼方から急速に近づいてきた。目に見えぬとも、何かが俺の傍に降りたのがわかった。 先程は感じなかった、強い風が吹いている。 ──この実をお食べよ、珠利。 そうすればお前は私の下で生きられるから。 突如唇に冷たいものが触れる。唇を割って舌先に小さく潰れたようなものが乗せられた。甘く水分を含んだそれは、喉奥を通りやがて胃へと落ちていく。 闇の中で、少しずつぼんやりとした輪郭が浮かび上がってくる。 そして俺は、ようやく動くようになった身体を起こしてひざまずく。 ああ、どうか貴方の名を私に賜りください。

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