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救済 〜 the Salvation 3 ※
途切れることなく下肢から聞こえてくる水音は、腰を振る度に激しさを増していく。
肉を打ちつける音に混じり、濡れた喘ぎ声が唇から次々とこぼれ落ちる。
「──ああっ、あ、ん……ッ」
背中をしならせて腰を揺らし、飽くなき快楽を求めるこの方は誠に美しい。
「珠利……」
うっすらと目を開けて、主は俺の名を呼ぶ。その内側は快楽に蠢きながら一層奥へと誘い込もうと俺の半身を締めつけた。
美しい、闇の神。
促されるままに絶頂まで駆け抜けて、その体内に精を放つ。幾度かに渡り収縮を繰り返す間、何にも勝る強い快楽に翻弄されながら、縋るようにそのしなやかな身体を強く抱きしめた。
私がこうして交わることができるのは、この方を以ていない。
荒い呼吸を繰り返しながら頭を上げて、組み敷いた神を見下ろす。
俺は今まで自分が何を信仰していたのかさえ知らず、この方に仕えていたのだ。
──あの夜。
俺を受け入れた流伽は、契りを終えた途端忽然と姿を消してしまった。
どこかへ行ったのではない。まだ身体は繋いでいたはずなのに、この腕の中から幻のように掻き消えたのだ。
残された虚空の中、途方に暮れた俺は主の下へと参じた。待ち受けていた主は、跪く俺を前にして艶やかに笑った。
主は俺の愚行を全て存じていたのだ。
「珠利……お前の目には見えないだろうから、教えてあげる」
果てた後の気怠さを抱いたままに、主の唇がゆっくりと弧を描いた。それを俺は背筋の凍る思いでただ見下ろす。
「あの羊飼いが今、お前の後ろで私たちをじつと見つめているよ」
主はそう言って妖艶に笑う。
俺の守っていたのは、冥府へと続く門。肉体の滅びた魂の通るところだったのだ。
そして俺は主と契約を結び、仮の身体を得た死者に過ぎない。
生きながら死者と交わった流伽は肉体を失い、亡霊の通るあの門を抜けて主の下へと辿り着いた。もはや俺の目には見えぬが、今もこの傍にいるのだという。
美しき冥府の神は、身体を繋いだまま腕を伸ばして俺の頬を撫で下ろし、細い指先でゆるりと唇をなぞっていく。
「柘榴 を食べさせればよかったのにね。私がお前にそうしたように」
そう言って主は眩しそうに目を細める。この方は光に弱い。俺にはわからないが、流伽は魂のみとなっても未だ光を放ち続けているのだという。
俺を見上げる主の美しい瞳には、虚りなき慈しみの情が浮かぶ。冥府を支配する孤独な神は、このような罪を犯した俺を尚必要としてくれるのだ。
この方なくして俺が存在することはない。その慈愛を享受できる喜びにこの胸は打ち震える。
かくして俺は主の下で、先導者を失った羊の民たちが射干玉 の闇にぬるりと呑まれるのを傍観するのだ。
主よ、貴方は私を導く羊飼い。
罪深き私は貴方に仕え、未来永劫そのご慈悲を賜わるのです。
"告解 ~ the Gate for God ~ "
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