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第6話

 水泳をしている人の特徴的な逆三角形。 「前から良い体つきだとは思っていたけど、腹筋、割れているね」  触っても平気かなと躊躇いつつ、そっと腹筋へと手を伸ばすが、 「高貴は筋肉ないのな」  逆に向こうからぺたぺたと触れられて、くすぐったいのと恥ずかしさから身をよじって手から逃げた。 「眼鏡を外すと、印象が柔らかくなるね」  いつも前髪を上げているのだが、今日はプールなのでそのままにしている。それも相成って、いつもと印象が違ってみるのだろう。 「裸眼だよね?」 「あぁ」 「ちゃんと歩ける?」 「大丈夫だ」 「なんだ。見えないなら手を繋いでいこうかっていうつもりだったのに」  何を考えているのだろうか。男同士で手なんて繋いでいたら周りから変な顔で見られるだけだ。 「馬鹿な事を言っていないで、ほら、行くぞ」 「おうっ」  ぼんやりとは見えるようで、手を引くこともなく目的の場所まで行けた。  先に巧巳が滑り、後に高貴が続く。 「おおっ、おおお……」  思わず声が出てしまったのだろう。  沈着冷静なのかと思っていたのに、意外と色々な表情を見せてくれる。  先にプールに滑り落ちた巧巳が両腕で自分を抱きしめながら高貴を待っていた。 「ぶはっ、余程面白かったようだね」 「むっ、別に」  ちょっと拗ねた顔を見せる彼に、胸の奥がずくっと疼く。 「え、あ、俺? あんなの平気だよ」  何だろうと胸に手を押さえて巧巳を見るが、特になにも反応はなく、気のせいだったかと、彼の手を掴んでもう一度行こうと誘う。 「良いぞ。高貴がどうしてもというのなら……」  ウォータースライダーを見上げる巧巳は、浮かれそうになるのを必死に抑えているという感じで、それに笑いそうになるのを手で口元を押さえて必死にたえる。 「そうだね、もう一回滑りたいから付き合ってよ」 と手を掴めば、仕方ないなといいながらその手を握り返してくれた。

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