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第7話
楽しそうな姿を見て良かったと思う。
「少し休憩しよう」
あれから波のたつプールへ向かい、二人で波に逆らうように泳いだ。
流石に水泳をしていた巧巳には敵わず、かき氷を奢ることになった。
「今日は楽しそうな巧巳の顔を沢山見られたよ」
「顔に出ていたか?」
ぺたぺたと自分の頬を触る巧巳に頷いて、こんなだったよと笑顔を向ける。
「いつもそうしていればいいのに。それでなくとも『委員長って何があっても表情が変わらなさそう』とか言われているんだからさ」
「まぁ、そうだろうな。別にそれで構わない」
眉を顰めて俯く。
「えぇ、勿体ないよ。こんなに良い顔できるのに」
額のしわを指で押し、
「せめて俺と入る時は素直に表情を見せる事っ」
と、指を離した。
「努力はしてみよう」
「よし。かき氷を食べたら、もう一回滑ろうか」
その瞬間、そわそわとし始める巧巳にが、小さな子供みたいで可愛い。
かき氷の冷たさが、熱い体に染み渡る。
自分の頬にそれを押し当てれば、口角を上げた巧巳がもう片方にそれを押し付けてくる。
「ひゃぁっ」
流石に冷たくて、声が出てしまう。
「ふっ、くくく」
してやったりという顔をする巧巳に、ベーっと舌を出せば、
「真っ青」
と、自分はメロン色をした舌を出して見せた。
ベッドに横になり、一緒に撮った写真を見つめる。
日焼けする前に一枚、日焼けした後に、ボディビルダーがするようなポーズで数枚撮った。
こんがりと焼けた肌はより男らしく、スマホの画面を撫でながら体がやけに熱くなってくる。
「やばい……」
男として憧れる体つきだからか、それとも色々な彼の表情を見たせいなのか、たまる熱は抑えがきかなくなり、スマホの画面を見つめたまま下半身へと手を伸ばす。
「んっ」
濡れた身体が、自分と身体を重ね合い流れた汗に見えてくる。
「は、あっ」
あの時見せた、メロン色をした舌。それを絡め合ったら甘そうだ。
「く、んん……」
手が白濁で濡れ、信じられないとティッシュでそれをふき取った。
「俺、そういう意味で巧巳が好きなの?」
力なくベッドに横になる。
流石に気になる相手だとしても、男に対して抜いたりはしないだろう。
「はぁ、まさか、ねぇ」
補習が無かったら、気になる存在だが、ただのクラスメイトという関係で終わっていただろう。
だが、彼の事を知ってしまったのだ。これから先、もっと彼を知りたくなるだろう。
そこに性欲的なモノがプラスされるだけ。
夏休みは一緒に楽しく遊ぶだけでなく、別の楽しみ方を教える事になりかねない。
そんな事をしたら、折角の関係が崩れてしまう恐れがある。
スマホの写真は夏の思い出にとっておき、今は高校生らしく夏休みを楽しもうと頭の中を切り替えた。
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