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第10話

 初めて友達を家に呼ぶ。  やたらと母親が嬉しそうだったのは、高貴が背が高くカッコいいからだろう。  浴衣を出して合わせていた時も、きっとよく似合うわよと目を輝かせていた。 「母さん、後は俺がやるから」 「えぇっ、わかったわよ。また後でね、高貴君っ」  渋々と部屋を出ていく母親に、高貴は明るい母親だなと笑っている。 「恥ずかしい……」 「えぇ、いいじゃん。俺の母ちゃんと合いそう」  きっと明るくて話し上手な母親なのだろうと想像し、出してもらった浴衣を高貴にあてた。 「うん、確かに似合うだろうな」  顔を覗き込めば、 「そう、かな」  照れつつ視線を外されてしまう。 「どうする、俺が着せようか?」 「うんん。巧巳が着るのを見ながら着てみるよ」 「わかった」  ポロシャツとズボンを脱ぎ、パンツ一枚となる。  その姿をティーシャツを脱いだ格好で高貴が見つめていた。 「高貴?」 「あ、あぁ。ごめん。いつみても良い身体で」 「俺の身体が好きだな」  プールの時も思った事だが、やたらと身体を見られる。  あまりじろじろと見られるのは好きではないが、高貴に対しては不思議とそ思わない。目元を赤く染めて色っぽい目で見つめてくるのだから。  自分は決してナルシストではないとは思うが、その時だけはもっと俺を見ろと思ってしまうのだ。 「あ、う……、憧れるというか」  さらに顔を赤くした高貴に、何故だろう、つい、 「触れるか?」  と手を掴んでいた。 「え?」  戸惑う高貴に、 「あぁ、すまん。触りたいのかと思った」  流石にこれは引くよなと、馬鹿げた事をしてしまったと手を離すが、次の瞬間、その身を高貴に抱きしめられた。 「高貴っ」 「巧巳が、悪いんだからな」  と唇に柔らかくて暖かいモノが触れた。 「んっ」  キスをしている。  あまりの驚きに頭の中は真っ白になり、抵抗をすることも出来ぬままそれを受け入れていた。  舌が歯列をなで、舌が絡みつく。  こんな感覚ははじめてで、やたらと身体が熱くなるし芯が甘く痺れてしまう。 「たくみ」  高貴は行為に夢中で、巧巳は力が抜けて畳に膝をついた。そのまま押し倒されるようなカタチとなり、互いの視線が合う。  そこで我に返った。  身体が離れ、高貴がごめんと呟く。  キスをしてしまった事を後悔している。顔にそうかいてあった。  熱がひき、頭の中が冷静になる。  きっと次に出る行動は、脱いだティーシャツを着て帰るというだろう。  案の定、ティーシャツを手にしたところで、巧巳は身を起こして高貴の腕をつかんだ。 「巧巳、俺っ」  引き止められるとは思わなかったのだろう。離してと言う高貴に、巧巳は駄目だと首を横に振る。 「帰るな。祭りに行くと約束した」  ここで手を離したら高貴を失う。ただのクラスメイトという関係にはもう戻りたくはない。 「ごめん、もう無理だよ……」  好きなんだと、高貴が呟いた。  あの熱い視線の意味はそういう事だったのか。  心にすとんと落ちる。そうか、だから高貴の視線は不愉快じゃなかったんだ。  自分もきっと同じ意味で……。 「それならば俺の傍に居ろ」 「何を言っているか解っているのか?」 「あぁ、解っている」  目を見開きながら見つめる高貴に、今度は自分の方からキスをする。 「巧巳っ」  互いに想いは一緒だ。  それが通じたようで高貴が照れながら抱きしめられた。

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