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第13話
「高貴、次は射的をやろうっ」
目を輝かせて向うにあると袖を引っ張る。
それが可愛くて、巧巳の方こそ子供のようだと、こっそりと思いながら、
「いいねぇ、やろう」
とそちらへと足を向ける。
「なぁ、賭けでもするか?」
もっと祭りを楽しもうと思っての提案。普段なら決して口にしないような事を言うなんて。
「おっ、巧巳君の口からそんな事が。いいのかなぁ、委員長」
口角を上げて背中を強く叩いた。
「折角だ。楽しみたいだろう?」
「よし、負けた方は勝った人に何か奢るって事で。OK?」
「了解した」
二人並んで射的を始める。なかなか当たらない巧巳に対し、高貴はひとつ撃ち落とした。
「すごいな」
景品を手にする高貴を尊敬するように見上げる。唯一勝てるのがこういう事だけなのもなんだが、まぁ、好いた相手に良く思われるのであれば悪くない。
「まぁね。巧巳の集中力はすごかったな。当たんなかったけど」
構えている時は凄腕そうに見えたのに、球は見事に景品を反れていった。
「む、確かにその通りなので文句が言えない」
「じゃぁ、俺、焼そばね」
「わかった」
高貴に焼そばを買い、巧巳はイカ焼きにした。
「食べるか?」
「え?」
こんがりと焼けていい匂いがするイカを差し出されて、巧巳の思いに気が付く。
友達と一緒に回し食べをしたかったのだろう。遠慮なく高貴はイカ焼きにかぶりついた。
「うん、美味い」
イカ焼きには歯形がくっきりと残った。それを心なしか嬉しそうに見ている。
よかった。嫌な顔をされなくて。
巧巳は躊躇なく歯形がついたその箇所へと口をつけ、それが先ほどのキスを思い出させる。
思わずその姿を見つめていたら、
「なんだ、もっと食いたいのか?」
とイカ焼きを差し出してくる。
「あ、いや、違う」
手を振りそう答えると、小首を傾げて再びかぶりつく。
唇をぺろりと舐め、そして目を細め高貴の方へと向けた。それが扇情的で、煽られた欲が身体を熱くする。
「なんだ、高貴」
食べている姿を見て欲情したなんて言えない。
「え、いやぁ、間接キスだなって」
と誤魔化した。
「なんだ、キスした仲なのに」
関節ではなく直接触れ合っただろうと、高貴の唇を指で撫でた。
「た、巧巳っ」
更に煽るような真似をされ、胸の高鳴りが半端ない。
「高貴、俺にも焼そばを食わせろ」
しかも、食べさせてくれとばかりに口を指さした。
もう限界だった。
「小悪魔め……」
と巧巳の手を握りしめ、ひとけの無い場所へと連れて行き、焼きそばの代りにキスをする。口内はイカ焼きの味がした。
「んぁ、やきそば」
「後であーんして食べさせてやるから」
「ん、約束、だぞ」
たっぷりとキスを堪能し、濡れた唇を親指で拭う。
「高貴、熱い」
首元に顔を摺り寄せて甘えてくる。
とろんと蕩けた表情は誰にも見せたくないくらいに色っぽくて可愛い。
「もっと遊ばせてやりたいけど、駄目だ、家に帰りたい」
頬を包み込んで、巧巳に触れたいと素直に口にする。
「もう、祭りは堪能した」
帰ろうと手を握りしめられ、そのまま二人は家へと向けて歩き出した。
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