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第12話

 屋台を見るとわくわくしてしまう。  そんな高貴を見て、巧巳が子供のようだと笑う。 「いいじゃんかよ。よし、遊ぶぞっ」  肩に腕を回すと、巧巳の口元が綻んでいる。  浴衣も良く似合うし色っぽい。つい、目を奪われてしまうのは仕方がないとおもう。  後は、と、狐のお面を二つ買い、巧巳の頭につけた。 「ヒーローのお面じゃないのか」  子供たちがつけている戦隊物のレッドのお面を指をさす。 「なんだ、巧巳はあれがよかったのか?」  ニヤニヤとしていたら、違うと顔を背ける。 「ほら、次に行くぞ。ヨーヨー釣りだ」 「良いよ」  子供たちに混ざりヨーヨー釣りをはじめる。  高貴は早々とつり紙が切れてしまったが、巧巳は慎重にヨーヨーを釣りあげようとする。  だが、すぐ隣の子供が釣り上げた途端につり紙が切れて水しぶきが上がり、運悪く巧巳のつり紙も切れてしまった。 「くぅぅっ」  本気で悔しがっている。 「お兄ちゃん、ごめんね」  流石に可哀想と思ったか謝る子供に、巧巳は立ちあがり気にするなと言う。 「あんちゃん、残念だったね」  出店のおじさんが笑いながら好きなのを一つあげるよと指差す。  それを聞いた途端、表情がみるみるうちに変わるものだから高貴は我慢できずに笑ってしまった。 「高貴」  ジト目を向けられ、笑いを必死に引っ込める。 「ほら、お前も一つ選んで良いそうだぞ。どれにする?」  水面に浮かぶ色とりどりの水風船。そこに巧巳が着ている浴衣と同じ色を見つけた。 「俺はこれにする」  とゴムの輪っかを掴んだ。 「では俺はこれを」  明るいオレンジ色をした水風船。  どうしてそれを選んだのかが気になって、ヨーヨー釣りの出店を後にしたのち尋ねる。 「高貴のように明るくて楽しい、まるで今日の祭りのようだなと思ってな」  嬉し事を言ってくれる。 「俺は……」 「俺の着ている浴衣の色、だろう?」  水風船を指で突き、顔を覗き込む。  ここが外でなかったら、このまま襲っていたかもしれない。今日は巧巳に心を振り回されてばかりだ。

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